
みゆわ
@miyuwa
2026年8月13日
夏帆
村上春樹
読み終わった
感想
読書日記
村上春樹作品の中で一番おもしろく読めた。
難解な用語が少なく、読者への寄り添いを感じた。
主たるテーマは「母と娘」だ。
最後に「母親」という役割から脱却した母親がいち個人として夏帆と言葉を交わすシーンがとても良かった。
私自身も母親と「今『母親』と話してるな」と感じるときと「今個人として話してるな」と感じるときがある。不和を抱えた母と娘にとっては後者の方が圧倒的に理想的だ。なぜなら「母親」として私を支配してこないし、そこには対等性があるから(母親と仲がいい娘はどうなんだろう?)。しかし母と娘はこの理想的な関係性を築き上げるまでにこの物語で描かれるような壮絶な「儀式」が必要とされる。これは現実世界では何に相当するだろう。夏帆が母親に対して行ったこと(シロアリの女王の退治)とはつまるところ、母親の悪辣さや淫靡さと向き合い、それらを取り除く行為だ。この物語では大袈裟に描かれているが、現実世界で夏帆が行ったことに相当するのは母親の悪いところを指摘する程度のことなのではないだろうか。子供は「母親」という存在をその役割抜きにして認識することが難しい。いち個人として母親を認識し、悪いことは悪いと言えるようになることが母と娘の関係性を上の次元へと押し上げる。シロアリの女王退治という大きな儀式を、多くの人間は二十代後半あたりまでにやるのだろう。
一見、突飛でファンタスティックな物語に見えるが、よく読むととても身近なトピックだったりするのが村上春樹作品はおもしろい。やはり小説というものは物語を通していかに日常への気づきを得るかだと思う。この物語の中でも、良い物語は有用性を孕む、というくだりがあるが、概ね賛成だ。

