
M市のR氏
@aoi-honmimi
2026年8月13日
掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集
ルシア・ベルリン,
岸本佐知子
読み終わった
三度の結婚と三度の離婚を経験し、シングルマザーで四人の子供を育て、自身が書いた小説が没後11年目にして日の目を浴びる。遥か昔の芸術家のような運命をたどった著者の実体験に基づく24篇の小説集。
いわゆるブルーカラーの職種に就いていた人間が書いた小説が注目されたことに興味を持ったけれど、もともとは学校を飛び級できるほどの才女でおまけに三度も結婚できるほどの美人。正直に「なぁんだ」とがっかりしたことを否定できない。そして、作者の小説的技法のすごさも絶賛される理由も分からなかった。
だけど、物語の語り手が幼少期によかれと思ってしたことが思わず裏目に出てしまう事態には共感を覚え、アルコール依存症の祖父と母親からの暴力や学校での居場所がない絶望感から唯一、守ってくれるアルコール依存症の叔父の存在を心強く思う。そんな語り手自身もいつしかアルコール依存症となり、アルコールを求める必死さがリアルに伝わる。
鉱山町、テキサスの貧民街、召使いつきのチリの屋敷、ニューヨーク、メキシコなどで掃除婦、刑務所での創作指導、認知症の父親やガンで末期の妹の面倒を見る。この多彩な人生経験のどこまでが事実でどこまでが創作なのかは本人のみぞ知るというのはある意味壮大なミステリーのようだ。