
不安定
@unstable_okyt
2026年8月14日
鉄の胡蝶は
保坂和志
感想
この小説が翻訳されるとしたら翻訳家は困るだろうなと思う。
小説の文法、それどころか日本語の文法からも逸脱した文章が多く出てくる。でもその逸脱は、この小説の瑕疵にはならない。(と思う)
ふつう、ひとは友だちや家族と喋る時に文法を気にしていない。「私が」「私は」という主語が何度も重なったり、「…で、」「…なんだけど、」「…というか、」のような適当な接続詞で文と文を繋げてだらだらと喋り、喋りの前半と後半で主語が変わったりもする。友だちや家族との会話を録音してそっくりそのまま文字起こししたら、文章としては相当変な日本語になるはずだ。
あるいは会話ではなく一人で考えごとをしている時も同じで、自分が頭の中で考えていることも、頭の中にあるうちはいわば文章以前の状態で、文法には則っていないような言葉が渦巻いている。
そういう文章以前の言葉を使って、作者が頭の中で考えていることを喋るように伝えているのだなと思いながら読んだ。

