
山口慎太朗
@shintaro_yamaguchi
2026年8月14日
急に具合が悪くなる
宮野真生子,
磯野真穂
買った
八月十二日
起き、母が作ってくれた朝飯を食う。味噌汁、納豆、米、サラダ、目玉焼き、ヨーグルト。「完璧です」と言いながら頂く。父が兄夫婦を車に乗せて空港に行くのを見送り、洗濯物を干す。皿を洗う。じいの様子を見に行くとばあの仏壇の横で泣いていた。ジーパンば縫いちゃあとだけど、と母に相談していたら父が帰ってきた。それで東京から持ってきた当て布と糸を出して、母ちゃんと父ちゃんと相談しながらまず当て布を丸く切ってアイロンをかける。ほんで縫っていくが、ちょっとのミスも許されねえのがシビアすぎる。ほんで母ちゃんが「もうあとでミシンでぶわぁ〜やるわ」と言うので、そうしてもらうことに。しかし楽しかった。ほいで「市内行こうかな、指輪欲しいんよね」と言って、結局はんだづけした錫の指輪はやはり調子が悪くて東京に置いてきたので、地元でなんか出会えたらな、という感じでそう言ったら、母が「ばあちゃんのもらいなっせ」と言うので、アクセサリーの文脈を大事にしすぎる俺にとっては最良のものだった。そして母ちゃんが「慎太朗、今のうちにあんたが持ってきなっせ!」と楽しそうにばあのジュエリーコレクションケースみたいなのを持ってきた。ばあが集めた大量のピアスや指輪やネックレスを母ちゃんと点検しながら汚れがひどいものは掃除をしたり、「これかわええね」とか「これよう着けとったね」とか話して、楽しい時間だった。なので何回も「楽しいわ」と言った。ほとんどに18K刻印が入っているので相続税がかからないのか一応調べると、形見分けの範囲に収まりそうな感じだった。本当に着けるやつだけを厳選するためにピンときたやつを全て着けてみて鏡で見る、という作業を繰り返し、金具が壊れているやつは父ちゃんに相談してその場で父ちゃんがペンチやら金槌を使って直す、という万全の体制だった。そして二時間ぐらいかけてネックレス四本と指輪二つに絞り、ばあの仏壇に行って、「ばあちゃん、俺が着けるけん、一緒に生きようね」と声に出して言うと、声に出したって聞こえないというのにそれでもこうやって声に出して伝えようとする自分の中のそういう部分を意外に思った。
ちょくちょくじいが泣きながら「ごめんなあ……ごめん……」と仏壇に謝っている声が聞こえてきて、母ちゃんが「謝るのもうええけんが〜! 生きとるときに謝って〜!」とか言っていておもろい。それでまあ、行かんでっちゃいいんだけど、家おってもな、ということで駅まで歩いてホームで電車を待っていたら地震がきて、おうおうこんな感じか、と思いながら市電へ乗り換えてDenkikan到着。マジでずっと良い映画館だな、と思いながらすぐに『急に具合が悪くなる』の上映が始まった。タイミングも状況もあって、信じられんぐらい泣いた。びっしょびしょになった。真理さんとマリーさんが二人で歩いているシーンでカメラが階段の下の降りた先に切り替えしてそっから追っていく撮り方とかでも泣いていた。良すぎたなあ、と思いながら外に出る。良すぎたっていうか、なんだろう、この映画のこと、いつか言葉にできる瞬間なんて来るんだろうか。
角マで左折して通町筋の横断歩道を渡って上通りに入り、長崎書店まで行って本をしばらく眺める。『急に具合が悪くなる』は東京に戻ってから買おう、と思う。歌集のラインナップが独特でおもしろかった。石牟礼道子さんの本はやっぱりずっと面出しにされていて安心する。スタバに寄ってマンゴーパッションティーフラペチーノをテイクアウトでもらって、市電から電車へと乗り継いで帰宅。駅から家まで歩いている短い時間で、十九時なのにこんな明るいのやばいな、空気がうますぎる、空も綺麗すぎる、水もメシもうますぎる、道広すぎる、とか思いながら帰宅。みんなで焼肉。もりもり食う。母も濱口さんの映画が好きなので『急に具合が悪くなる』のあらすじを説明していたら、涙が止まらんくなって泣きながら説明した。





