
RIYO BOOKS
@riyo_books
2023年7月15日

檸檬(れもん)
梶井基次郎
読み終わった
基次郎が捉えて描いた亜現実は、確かに退廃感のある目線で覗かれている。しかし、絶望、疲弊、苦悩に溢れる心情には沸々とした湧き上がる熱量が潜んでいる。この陰鬱な精神の底に流れる力強い熱量は「生命の価値観」が呼び起こすものであり、純粋な生への憧れが溢れている。この憧れが強いからこそ、現実と理想との乖離や、病苦によるもどかしさが、一層怒りを帯びて高まっていく。生への執着は生き様へと変化を見せ、立派な文士としてあろうと虚栄を張りながら熱心に作品を生み出す。彼にとって、ただ只管に執筆に向かうことは苦悩への戦いであり、苦悩を生み出す元ともなっていた。