
torajiro
@torajiro
2026年8月12日
いい子のあくび
高瀬隼子
読み終わった
ナツイチで購入したもの。高瀬隼子さんは芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』に続いての二作目です。受賞作は毎回読むようにしているけど、その後別の作品にまで実際に手が伸びる作家は多くない中、この方が他にどんなものをどんな風に書くのかどうしても気になって読んでみました。
本作は3遍収録されていますが、どれも良かったですね。『おいしいごはんが食べられますように』とも共通する、日常の人間関係や社会の動きの中で感じる違和感を描いているのですが、焦点の当て方が絶妙ですよね。誰しも多かれ少なかれ感じたことのあるような感情や違和感も多いのですが、なかなか言語化されたり表出化されにくい暗かったり攻撃的だったりするものが描かれています。社会に適応できない人、の話なのではなく、誰しも持っているものをあえて露悪的に書いている、という風に感じるのだけど、これは私が歳を重ねてきたからだろうか。10代で読んだりしていたらまた別のくらい方をしたかもしれないな、とも思う。
また、なぜ主人公たちが違和感や攻撃的な感情を持つかという経緯や背景への注目も必要ですね。主人公は共通して女性です。『末永い幸せ』では「結婚」や「家庭」に関わる保守的なジェンダー規範の抑圧が示されていますし、表題作『いい子のあくび』では180cmを超す体格の持ち主である大地の「おれ、ぶつかられたことないよ」という鈍感さ具合にイライラさせられる訳ですが、私自身もゲタを履いて生きて来られているマジョリティ男性として、想像しきれていない違和感や理不尽があるんだろうなとも思います。
違和感やモヤモヤや反抗心の捌け口はどこに向かうべきなのか。当たり屋的な振舞いによって社会的制裁を行うという暗い正義感のようなものはSNSの私刑社会的なものなのか。付箋やノートに書き殴るぐらいでおさめておければ良いのか、誰かと愚痴り合えば良いのか、どうなんでしょうね。