
巽
@Tatumi
2025年4月1日

新版 歌集 てのひらを燃やす
大森静佳
再読
風のない史跡を歩む寡黙なら寡黙なままでいいはずなのに
沈黙がリラを咲かせてもう何もこぼれないよう手の下に手を
教室に声とつとつと 訳されて異国の点灯夫は夜の街路へ
こんなにも架空のさびしさ散りばめて街とはつねに鳥の背景
立ち尽くす一世の他はなき樹々よその一本に似ているきみは
言葉より声が聴きたい初夏のひかりにさす傘、雨にさす傘
空間を選んで疲れやすき眼よやがてしずかな鬼百合の夏
触れることは届くことではないのだがてのひらに蛾を移して遊ぶ