名無しの積読家
@UNOwen
2026年8月15日
硝子の塔の殺人
知念実希人
読み終わった
借りてきた
初の知念実希人作品。紹介動画をきっかけに手にとったが、あまりの面白さに一気に読み進めてしまった。一言で表現するなら「とんでもない傑作に出会えてしまった」という高揚感に尽きる。海外・日本のミステリーの系譜を踏襲しつつ、二転三転する怒涛の展開には、ドラマ『VIVANT』をリアルタイムで観ていた時のような圧倒的な衝撃を受けた。
特に印象的だったのは、作中でとある人物のミステリー作品が「過去の名作の劣化版」「読んでいて苦痛」と酷評される描写だ。しかし本作自身は、往年の名作たちが持つ構成、トリック、設定を巧みに踏襲し、見事にブラッシュアップさせることで、まさに「ミステリーの集大成」とも言える領域に昇華されている。異なる作品の要素をひとつに統合してしまう手腕には脱帽した。知っているオマージュに出会うたび読書体験の財産を感じると同時に、未読の作品への好奇心も大いに刺激された。
個人的には『そして誰もいなくなった』『アクロイド殺し』(アガサ・クリスティ)、『十角館の殺人』(綾辻行人)、『マルチ・エンディングミステリー』(深水黎一郎)などを読んだ経験があったおかげで、作中の仕掛けにしっかりとついていき、余すことなく楽しむことができた。読者のみなさんが「この作品を読んでいたからこそ、より楽しめた!」と感じた他のミステリーがあれば、ぜひ教えてほしい。
また、本作を通じて「名探偵と犯人は表裏一体である」というテーマについても深く考えさせられた。主人公は犯人でありながら、別の事件が発生したことでワトソン役として捜査に加わる。その過程で、どこか人間性を欠いた「名探偵」に対し、犯人である主人公の方がよほど真っ当な精神の持ち主に見えてくる倒錯感は非常にスリリングだった。
作中には「天久鷹央」シリーズとの繋がりを匂わせる描写もあり、そちらもぜひ読んでみたい。素晴らしい読書体験を与えてくれたこの一冊に、心から感謝したい。
只々長く滅裂な感想となってしまったが、このような作品に出会えて良かったと心より思う。
