
梔子
@asago_404
2026年8月15日
ハジケテマザレ
金原ひとみ
読み終わった
コロナで派遣切りに遭った〝私〟が、食いつなぐために辿り着いたバイト先は、個性溢れる従業員の揃ったイタリアン。とある事情で店長が不在になり、閉店後にお店は彼女達のパーティ会場と化す。
お店を舞台にそこで働く人たちの関係性や人間模様・日常系を金原ひとみが書いたらこうなるって感じのお話で、普段とは毛色が違って面白かった。というのも帯にもある通り、普通がテーマだからだろう。世の中、自分は特別だと思っているか何者かになりたい普通の人で溢れているのに多様性がおかしな方向で広がり、〝普通〟という言葉が使いづらくなって、普通に対するハードルが変に上がっているが、いかに普通であることが尊く、普通から外れることが日本人には難しいことなのかというのを書いていた。
今作の主人公の真野さんは、他作の主人公みたく小説家とか海外育ちというような特殊な職業・経歴でもなければ、男に酒にセックスに依存している風もなくてごく一般的な生活を送っているあまり激しめじゃない人。他の従業員がパワフルすぎるのもあるけれど、全篇通して至る所に普段書いている主人公よりも多くの人が親しみやすいポイントがあったように思う。分けるならば『ミーツ・ザ・ワールド』や『ナチュラルボーンチキン』系の主人公。
コロナ禍から少しズレたタイミングではあるものの、飲食業界の人間である自分が集まって飲み食いして騒ぐことや、アラサーでバイトを続けることに対し、真野さんは居心地がいいものの不安を感じていたようだが、世間的にどうであれ、やっぱり自分の居場所を見つけるのって大事というのを感じたし、相変わず思考し言語化して相手に伝えることの大切さも描かれていた。
作中たくさんの激辛食べ物が登場するのだけれど、激辛が『非日常への入口』というのは面白い解釈。
余談。金原さんの書く女性達って、例えば3人グループだとして2人になった時にそこにいない1人の悪口とか愚痴を言うみたいなそういう女性特有の嫌なところが全く想像できないから好き。当人が居ないところで話していることは勿論あるけど、意見であって悪口感がない。凄い嫌な女の人達ではあるんだけど、基本的にはっきりと自分の意見があって言語化して相手に直接伝える能力がある人達だからそう思うのかもしれない。



