

梔子
@asago_404
- 2026年10月11日
- 2026年10月9日
どうしても生きてる朝井リョウ読み終わった現実は、物語にはならないような、誰かに言うほどでもない悩みや痛みで溢れ、次第に生きることが億劫になっていくもの。そんな誰しもが抱える〝死にたい〟という気持ちに寄り添う短編集。 村田沙耶香味を感じる温度感のなさ! 毎度思うのだけれど、朝井さんは男性目線の話より、女性目線のほうが読みやすいの本当に凄いと思う。全部長編でも面白そうだと思った。『籤』が好き。 頭がクリアなときにもう一度読んで、ちゃんと感想まとめたい。 312‐この世の中には、二重類の人間がいる。生きる世界が変わってしまったとき、自分を変えなくていい人。その人のせいで、自分を変えなければならなくなる人。そしてそれはきっと、知らないうちに知らないところで、決められてしまっている。 - 2026年10月1日
炭酸水と犬砂村かいり読み終わった9年付き合い、その半分近くを同棲して結婚まで秒読みだった彼氏から「他にも恋人が出来た」と告げられ、怒りと悲しみで混乱し戸惑う中、主人公にも好意を向ける男達が…。結婚や恋とはなんたるかを思い知る。 ネタバレありの少し辛口評価↓ 『アパートたまゆら』と、同コンテストで同時受賞からの同時刊行ということで、あまり期待していなかったのだけれど、文体は最近の砂村さんに近くてだいぶ読みやすかった。ただ、こういう結末にするなら、尺使う所をもうちょっと変えたほうがよかったのでは…と思ってしまった。 彼氏は当然クズで、それでも9年付き合い、同棲して三十路で仕事も派遣で不安定だからさっくりと別れに踏み切れないというのは当然だろうけど、あまりにグダグダしてたなぁと。それは誰がどう見ても怒らなきゃダメだろう(というか、ここまできたらもう呆れないか?)というラインが何度もあり、けれど何も言えないままというの物語の三分の二以上だらだら繰り返して少し疲弊してしまったのと、次の恋に乗り換える展開の速さと唐突さについていけなかった。もちろん彼氏の弟が主人公を好きなのは最初から分かっていたけれど、主人公の弟に対する気持ちが全然フラグになっていなかったように見える。ちょいちょいあったけれど、彼氏との出来事がインパクト強すぎて霞んでいた。そりゃこんな状況なら自分の味方でいて、優しくしてくれる人に対して気分が上がっている&単に可愛がってるふうにしか見えず、噛ませ犬だった志賀さんと同列に感じた。せめて彼氏に恋人のこと切り出される前の日常を最初に描かれていれば違和感も少なかったかも。 主人公の年相応の生々しい悩みや人に好かれたい欲が多い割に、長年の自分に好意を向けてきた人の想いに気づけなかったのも違和感と、弟くんの行動は運命などそれっぽい雰囲気にして誤魔化していたけどほとんどストーカー。これは恋愛ものあるあるなのかもしれないが、その他の描写が丁寧でリアルが故にノイズになっていたように思う。 あくまで個人的好みにはなるけれど、仕事ぶりが評価されて正社員になれる話もあったし、三十路の独身女性の何も悪いことをしていないにも関わらず居心地の悪さというものを長々語っていた、のだから、男達を振り払って一人で生きていく選択をするオチだったなら、すごく好きな本になっていた。 とはいえ、ストレス続きでも続きが気になってサクサク読めたのはやはりそれだけの文章力がある方なのだと思うし、結末も無理矢理ハッピーエンドにした感は否めないけど、クズ彼氏と別れてれてくれたのはよかった。最後の最後で向き合えたということかな。クズ彼氏とその恋人にもっとちゃんと痛い目あって欲しあったけど、極端かつ、こういう人いるよなぁとか深掘りはしていないけれど設定との整合性の取れた言動がリアルでちゃんと腹が立つ(褒めてる) でも表紙とタイトルに関しては、わざわざそれにした意図が分からない…。新しい恋に行ったのに、どうして、クズ彼氏の恋人を象徴するものだったのだろう? - 2026年9月26日
流浪の月凪良ゆう買った実は文庫を持っていなかったのだけれど、素敵な帯になっていたので購入。 「すべての関係に名前をつけて善悪を定めてもわたしたちはどこにも行けません」 一瞬で心を鷲掴みにされてまた再読したくなった。 後ろも凪良さんが『流浪の月』について語っていて、ぜひ作品のファンの方は読んでほしい。 個人的に帯も含めて表紙だと思っているから、帯には、何万部売れたとか誰それが推奨とか実写化とかそんなことじゃなくて、その作品にしか書けないことを書いてほしい。 汝の方も早く以前のような帯に戻りますように。
- 2026年9月26日
アパートたまゆら砂村かいり読み終わった潔癖症ゆえ、誰とも深いお付き合いのできなかった主人公が、ひょんなことからお隣さんの部屋に泊めてもらうことになるというところから始まる恋愛小説。 以後、ネタバレありの辛口評価 著者の最近の作品が好きで、普段絶対に読まないジャンルだけど、砂村さんの文章が好きなのでいけるかな?と思ったけど、やっぱり私には合わなかった。 というより、ジャンルとかそれ以前の問題かも。本当に同じ人が書いたのかな?ってなるくらいいつもと文章も違っていて、5年前のデビュー作だからなのか、カクヨムのコンテスト作品だしそれ向けに書いてるだけなのか分からないけど、場面転換なども唐突で「ん?」となることも多く、読みづらい印象。 それと、他の方の感想にもあるとおり、とにかく主人公に潔癖症の設定はいるのか?という疑問が…。 もちろん、潔癖症の症状は人それぞれで、体調/メンタル/関係性で変わってくるのも知っているけど、その辺りを深掘りするわけでもないし、むしろ人に(それも性的な意味で)触れられたい欲が強くて、そういう矛盾からの葛藤は潔癖症じゃなくてもある程度誰でも起こりうることなのだから、おざなりにしないで書けばもっといろんな層から共感を得られるであろうにと思ってしまう。何故かこの人ならいけるという感覚があるのもわかるけど、その感覚を丁寧に描くわけでもなく、少しずつしか進展しないのになぜか置いてきぼりにされる感じで、ゆっくり距離を縮めていくっていう風ではなく悪い意味のもどかしさがすごくて、の割にあっさり付き合い〜の、結構な相手の過去の恋愛の産物を知って尚、心理描写をサラッと描いてちょっとだけ衝突して、話し合いもろくにしないまま初対面と同じ状況に絆されて切り替えてハッピーエンド…。アラサー2人がいい年して運命にという言葉に頼りきってふわふわ恋愛しているように見えて、キュンとも程遠く感じた。少なくとももう少し若ければ、性的な描写が少なければ純愛だな〜かわいいな、と思えたかも…。とにかく色々荒くて小説という形や砂村さんの文体に合ってないと感じたし、謳い文句の致死量のときめきというのにもそこまでかな?と思ってしまう。 全体的に男性の描いたラノベ感がすごかった。特に理由なくモテる主人公、特に魅力が伝わらない恋の相手(苦労しそうな男だなという感想しか)スパイスとして出される主人公に思いを寄せる男性も、散々思わせぶりなことされて振り回されてかわいそうとも…。 - 2026年9月18日
腹を空かせた勇者ども金原ひとみ読み終わった金原作品によく出てくる恋する母親。だが今回は珍しくその娘視点で描かれた作品。 普段書いているような理論武装の大人の女性ではなく、陽キャ女子中学生ということで新鮮だった。 金原さんは、人と人は決して分かり合えないということをずっと書き続けている人だと思っているのだけど、読んでいる私と登場人物とで、金原ひとみ初見作品である『軽薄』ぶりにそのことを強く感じた。 終始娘視点だったことで、今まで偉そうに客観性の有無や恋と母親を両立させている(最も別作品では娘に「無理やりこなしていた」と言われているが)ことを説いていたことがそうではないとより浮き彫りになっていたし、母親の彼氏が最後まで情報としてしか出てこない構成も良かった。 いつもより若い子に向けて書いたのかなという雰囲気を感じた。『理屈っぽい大人なんて相手にしないで、好きだと思えるもの大事にして、それを伝えられる言葉と気持ちの強さを持って生きてね』と言う様な…。 私自身、親の恋愛というものに人より強い抵抗感がある自覚もあるので、それを娘視点で描かれるとなるとかなり疲弊してしまって途中休憩を挟んだ。 不倫しながら離婚はしないし、どころか彼氏がいることを隠しもしないで、娘にはスマホの使用時間や門限などを厳しく設け、破った時にはペナルティや自分の価値観に見合う納得させる理由を中学生に求める母親。人には想像力がない語彙力がないと説教する割に、圧倒的に自分よりも人生経験の少ない歳下相手に同じ目線に立たせようとするその姿勢がどうも気に入らない。挙句の果てには、娘に対して「人の恋愛に口を挟まなければ人生はもっと有意義になものになる」などと嫌味を飛ばす始末で、いやいや、子どもとパートナーは巻き込まれてるんだから口を挟む権利があるんだよ、と…。 幸せは一つの要素によって得られるものじゃないというセリフ(不倫していない父親が発した言葉だが)がある。それ自体はそのとおりなのだけど、絶対に傷つく人がいることが誰でも分かることでしか得られない幸せを求めてしまう場合、ただの自分勝手な欲張りさんにしか見えないし、そういう人が愛だの恋だの語るのはちゃんちゃらおかしいと思ってしまう。どうしても私には何をどう解かれても肯定できないことだ。 余談だけれど…この手の人たち、一日三食・弁当、家を空けるときの作り置きとかそういうちゃんと料理を作っていることを盾にする人多いけど、恋人いない親が同じことやっても特段褒められなかったり感謝されないことがアピールポイントみたいになってしまうの、世の不倫してないお母さん・シングルマザー達を思うと何の大義名分にもならないんだけどなと思う。この作品において母親は別に恩着せがましくしているわけではないけれど、勿論罪悪感のためでもない雰囲気でやるべきことをやっているという印象。ただ、娘はかなりそのことに対して大変だなとか気を遣っている印象を受けた。忙しのは仕事+彼氏に会いに行ってるからという自分で首絞めてるだけなのに…、勿論お母さんがご飯を作るのが当たり前!と感謝を忘れてしまうのは良くないけれど、子どものときくらいそんな気の使い方しないでいてほしいと願ってしまう。…年かな笑 - 2026年9月9日
へびつかい座の見えない夜砂村かいり〝何か〟を集める人たちの物語。 集めているそのもの自体、はたまた収集という行為に魅せられるまでの経緯はもちろん多種多様で、そこに至るまでのそれぞれの人生の苦悩や傷を描かれた作品。 どんなものも興味が無い人からすれば、がらくたになってしまう。表題作でもあった親に「そんなもの集めて〜」と言われるくだり、心当たりある人いっぱいいるんじゃないのだろうか。 話によっては集めてるものがちょっと犯罪めいていたけれど、趣味とか夢中になっているもの馬鹿にされるのは誰だって不快だ。別に理解しなくていいし、せめてその人の前だけでも口を閉じるという簡単なことができない人は多いよね。理解する気もないのにその人の領域を侵していいと思ってるなんてなんて傲慢なんだろう。 帯には強く収集癖と謳っていたけど、そう書かれなければ分からないくらいで、強いて共通点上げろって言われたらみんな何かしら集めてるかも……と思う程度。まぁテーマなんてどうでもいいくらい今回も面白かったというかじんわり沁みた。 どの話も好きだけど⬇のふたつが特にお気に入り。(ネタバレ気味の感想) 『トカゲのいる闇』 不妊治療を諦め傷心中の妻を他所に、勝手にレオパを買ってきてその抜け殻収集に夢中な夫。 専業主婦という、休みも報酬も将来の絶対的な安心もないのに、何かを買うにしても出かけるにしてもいちいち夫にお金を貰い、許可を貰い───と、不安定で不自由な生き方に憂い迷う。 全然主人公と立場も状況も違うのに、すごく共感して刺さった。 専業主婦を勧めるの、このご時世それを提案できるのはもちろんすごいけれど、働かなくていい=優しさじゃなくて、自分があらゆる意味で優位に立ってしまうことを自覚して、かつ相手の未来まで配慮しなければいけないのかもしれない。 別小説だけれど「自分の人生の手綱は自分で握っていたい」という言葉を思い出す。 『ハマエンドウが咲いていた』 周囲の止める声に聞く耳を持たずに荒れた海でサーフィンする婚約者に、せめてものお守りをとイルカの耳石を探す女性。いくら探しても見つからず、やがて漂流物を異常なまでに集めているという男を知り、その男の元へ向かうが……。 老人の語りスタイルで展開されていく、おとぎ話のような二人の男女の物語。 ベタだけどもこういうのが好き〜!!端から端まで好み〜!! 現実的な話で長編が好きだけど、時にはこういう昨今の男女論争とか気にしない描写があって(昔話というのもあるけど)、かつ短編だからこそ深堀しなくても違和感にならない程度の要素の入った話を無性に読みたくなるし眩しく見える。 何を語ってもネタバレになるから語らない。とにかく好みだったという話。 - 2026年8月18日
目立った傷や汚れなし児玉雨子読み終わった休職中でありながら浪費家の夫のいらなくなったものをフリマアプリに出して小遣い稼ぎをする中、せどりサークルに勧誘され、やがて、本来の目的も忘れて〝もののの価値を見定める〟ことへ快楽を覚え── 主人公は夫が捨てようとしているものをフリマアプリに出品しているわけだけど、適応障害で休職中にも関わらず、傷症手当金すら貰わないで貯金を浪費してしまうという決して偉そうなことを言えた立場ではない夫にゴミ漁りだとか貧乏臭いとかほざかれたらそりゃあ不満や憤りを感じるのも当然で、自分のやっていることはおかしいことではないという安心感と、その手の知識がある人達から売れるかどうかを見定める目があると認めてもらいたいという承認欲求、経緯や理由はともあれ同じく売ることに執着した者同士で共有できるものがあるのではないかという居場所探しのような感覚でサークルに入ったっきり抜ける理由が見つからないまま、渦の中に取り込まれてしまったのだろう。 主人公が勧誘されたせどりサークルは、転売ヤーや詐欺ではない、まるで自分たちの行いが慈善活動だとでも言いたいような振る舞いで、縁がないこちらからすればなにが違うのかとは思うが、実際こういう人達はいて、そういう所から買われているのだから需要はあるのだろうし、きっとこの手の人達は、心理学を上手く使って賢く商売できることに酔っている節はあるのだと思う。 時折、描写不足感があるシーンはいくつかあったように思ったけど(純文学に馴染みがない私の読解不足かもしれない)、現代のものやお金に対する価値、引いては人生の価値観を上手く繋ぎ合わせている印象で、面白かった。 多分このご時世、フリマアプリを使ったことがない人って少ないと思うけど、どうして自身がその商品を捨てたり誰かにあげたりせずに売ろうと思ったのか、店から買わないのかという意味を考えずにはいられないような気がする。 𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠 23ーきっと、拓実は、自分に価値があるかどうかを考えたことがないのだと思う。ある、という前提で生きている。たとえ親や配偶者にとってかけがえのない宝物であっても、他の人にとっては大切に磨かれてきたがらくたなんじゃないかという不安は、彼からあまり感じられない。そういったことを疑ったことがないようで、自分は当然あらゆる他者からうっすらと求められているかえのいない存在として生きている。だけど、お前も私も、ただの会社員だろ。 59ーみんなさ、インフルエンサーも、うちらみたいな一般人も、異常に安いものを必要以上に買いまくりながら、異常に高いブランド物を欲しがっているのって、冷静に考えたらとっても変なことじゃん。 94ーきっとものの方が私たちよりうんと長くこの世に残っていられる。私たちがそんなものに対して優位に立てるのは、価値を与える瞬間だけだ。ものの中で生きて、ものを使って生きて、ものをごみかゴミじゃないかに仕分けて、ものより早く死ぬ。 106ーはるかに高い崖の上から、遠い海の激しい渦を睥睨するように拓実は語る。だけど、拓実のいる場所は崖の上なんかじゃない。また別の渦の中だ。私はメチャカイの渦の中で今ももがいている。消費という行動をしている限り、誰も安全な陸地からその渦を眺めることなんてできない。 108ー追い詰められてから動こうとするのは、能力なり環境なり、価値あるものを持っているか、道を譲られてきた人人の特権なのだ。窮地に立たされた時に誰かが助けてくれることを信じて疑わないから、ギリギリまで追い詰められてから初めて困りだす。仕事ができるわけでも、容姿が優れているわけでもない私は、きっと自分が追い詰められたことに気付いた頃には人知れず落っこちて、そのままおしまい。そうならないようにいつも少しずつ生活を案じて、私の生活という足場がほころばないようにようにしているのだけど、これがコスパ思考として、この思考を禁じられたらあなたのように生きられない私はどうやって生活の収支を合わせればいい? 115ー分からないことはなんでもカオスとだと片付けて、自分は規則の側に立って安心したいだけ。 - 2026年8月15日
シュガーレス・ラヴ山本文緒気になる読みたい - 2026年8月15日
ハジケテマザレ金原ひとみ読み終わったコロナで派遣切りに遭った〝私〟が、食いつなぐために辿り着いたバイト先は、個性溢れる従業員の揃ったイタリアン。とある事情で店長が不在になり、閉店後にお店は彼女達のパーティ会場と化す。 お店を舞台にそこで働く人たちの関係性や人間模様・日常系を金原ひとみが書いたらこうなるって感じのお話で、普段とは毛色が違って面白かった。というのも帯にもある通り、普通がテーマだからだろう。世の中、自分は特別だと思っているか何者かになりたい普通の人で溢れているのに多様性がおかしな方向で広がり、〝普通〟という言葉が使いづらくなって、普通に対するハードルが変に上がっているが、いかに普通であることが尊く、普通から外れることが日本人には難しいことなのかというのを書いていた。 今作の主人公の真野さんは、他作の主人公みたく小説家とか海外育ちというような特殊な職業・経歴でもなければ、男に酒にセックスに依存している風もなくてごく一般的な生活を送っているあまり激しめじゃない人。他の従業員がパワフルすぎるのもあるけれど、全篇通して至る所に普段書いている主人公よりも多くの人が親しみやすいポイントがあったように思う。分けるならば『ミーツ・ザ・ワールド』や『ナチュラルボーンチキン』系の主人公。 コロナ禍から少しズレたタイミングではあるものの、飲食業界の人間である自分が集まって飲み食いして騒ぐことや、アラサーでバイトを続けることに対し、真野さんは居心地がいいものの不安を感じていたようだが、世間的にどうであれ、やっぱり自分の居場所を見つけるのって大事というのを感じたし、相変わず思考し言語化して相手に伝えることの大切さも描かれていた。 作中たくさんの激辛食べ物が登場するのだけれど、激辛が『非日常への入口』というのは面白い解釈。 余談。金原さんの書く女性達って、例えば3人グループだとして2人になった時にそこにいない1人の悪口とか愚痴を言うみたいなそういう女性特有の嫌なところが全く想像できないから好き。当人が居ないところで話していることは勿論あるけど、意見であって悪口感がない。凄い嫌な女の人達ではあるんだけど、基本的にはっきりと自分の意見があって言語化して相手に直接伝える能力がある人達だからそう思うのかもしれない。 - 2026年7月31日
砂嵐に星屑一穂ミチ読み終わった舞台は大阪のテレビ局。そこで働く様々な立場の人達を描く。 誰かの日常が日々報道されるけれど、放送されることのどれくらいがありのままの姿なのだろうか。 一穂さん6冊目。 ストーリーそのものは特殊ではなく、あらすじだけ見れば〝最近よくある上手くいかない人生に共感させるような文章で優しく寄り添う系〟かなって思うことが多いのだけれど、読んでみると、テーマと舞台の選ぶセンス、比喩表現が素晴らしいなって毎度思うし、どこにでもいそうな人を書くのが本当に上手いなぁとしみじみ。 ────傷は傷のまま。悲しみは悲しみのまま。時は流れ、「あの日」は巡り、不在の思い出が胸の中だけに降り積もる。 うっかり涙が出そうになったひと文。 - 2026年7月24日
うたかたモザイク一穂ミチ読み終わった色んなジャンルの話がつまった短編集。 どの話も短いのに濃い。ページ数を見てサクッと読もうと軽い気持ちで手に取ったら時間かかってしまった。 何処かしんみりした気持ちになる話が多かったものの、以前トークショーに参加した時に別の機会で書いた短編を集めて一冊になることが多いというようなことを話してらしたし、特に共通のテーマ性は見られなかった。 ので、好き・お気に入り・印象に残った話の感想を書いていく。 『人魚』 一世一代のプロポーズに返ってきたのは、自分は人魚だという突拍子もない告白。そして知る彼女の過去と〝人魚〟の意味。 自分のことで、知っててほしいこと、知ってほしくないけど言わなきゃいけないこともあれば、隠さなきゃいけないこともある。そしてパートナーのことで知りたいこと、知りたくないこともある。 双方どちらの視点でもあることで、何を打ち明けて何を隠すか、もし言うならどのタイミングか、失敗してもお互いがそれに一生向き合うことが出来る相手とするのが結婚なんだろうな。 『永遠のアイ』 来るはずのない人から届いたメッセージ。正体はスマホをターゲットにしたウイルスによるなりすまし。けれど主人公は......。 こういう時代が来ているんだと思うと怖いけれど、主人公の場合仕方ないとか思ってしまうのもどうなんだ、私。 うるっとくるけど、すごく怖かった。 タイトルつけるのが上手いって言われてた理由がよく分かった。 『レモンの目』 束縛の激しい彼氏に悩まされる日々の唯一の癒しは、ベランダに訪れる黒猫ちゃん。 いや怖っ!!この短さだからこそ...という感じ。 例の一言呼んだ瞬間音が消える感覚があって、ホラーをあまり読まないのもあるかもしれないけれど、文章だけで現実の空気感を変えられるなんて経験ほとんどなかったので落差をつけるのが本当に上手なんだなぁと。 『BL』 天才を育成するプロジェクトの適合者として国中から孤児や知能の高い子どもが集められた施設で出会ったふたりの男の子の話。 こんなストレートなタイトルつける方じゃないのはわかっていたのでBL=ボーイズラブじゃなくて別の言葉の略だろうと最初からわかっていたけれど…読んでみるといいBLだ...そういう事かとしんみり。 『たまねぎちゃん』 2ページと短すぎてあらすじは書けない。一穂さんの比喩が好きで、これも上手い例えだなと。 『神さまはそない優しない』 死んだあと猫になって奥さんの元に戻った男性の話。同じ境遇の猫曰く、一度だけ人間の言葉で話せるというが……。 終始関西弁でテンポが良く、ツッコミもボケも面白くて笑っていたのだけど、めっちゃ泣かしに来るやん! 人を挟んだ未練って本当に残るだろうな。当たり前と思わずに後悔ないように伝えなきゃね。 『透子』 おじいちゃんのお使いで訪れる本屋さん。そこの店主は何故か私をいつも睨みつけている。ひょんなことから店主と話すようになり、友人に教えてもらった本を教えることになるが……。 明かされる主人公のこと、複雑だなぁ。地元の島で聞いた話でなんだかとてもしんどかった。 『かがみの孤城』が出てきてびっくり。トークショーでも新刊激推ししてたし、辻村さんのファンなのかな笑 - 2026年7月21日
コーヒーの囚人砂村かいり読み終わった砂村さん二冊目。 この方の描く文章の、淡々としているけど繊細で何処か諦めが滲んでいる人達、そして彼ら彼女らの過ごす日常と生活の温度感、人との距離のとり方がとても好み。 - 2026年7月21日
変半身(かわりみ)村田沙耶香読み終わった表題作は、定期的にバズる『ポーポーポーポーポーポー』×∞の話。 伝統やしきたり。自分が生まれ育った土地のものは常識となるし、旅行先などで見る展示品の解説を嘘と思ったりだなんてしない。話を広げてしまえば、自分で本当かどうか確かめること、その術すらなく、地球・人類の歴史も疑わずに、教科書に書いてあるから専門家がそう言っているからそうなのだと信じて私達は生きている。 同著者の『信仰』では信じる=騙されていると言うふうに描いていたがこちらは信じる=何も考えていないこと、そして何も信じず生きるということは無理ということを描いていて共通点も多く感じた。 信じるって、本当になんだろう。 『満潮』の方はちょっと難しかった。 多分、男女の性行為に対し、お互いが持つ使命的なもののプレッシャーから解き放たれるための話……だろうか………。 - 2026年7月18日
ままならないから私とあなた朝井リョウ読み終わった技術の発展でどんどん便利になっていく世界。 いつぞや某SNSで見た『私たちが数秒・指先ひとつで得られる知識は昔の人が命をかけてでも知りたかったこと』という投稿を思い出す。けれど私たちは、昔の人が容易に出来たことが、便利すぎるが故に出来なくなっている。 便利さに慣れ、思考することを止めるのはどうなのか、そこに効率の良さを求めてしまったら、そもそもそういった事柄をする意味が無いのでは?と思う事が増えているのだけれど、作中の『自分が生まれた時に既にあった便利な物は使っておいて、新しく出来て自分の人生を否定されそうなものだけを受け入れず突っぱねるのはずるい』という言い分にははっとした。 利便性や効率の良さを求める理由・求めてはいけない理由に対し、双方が確固たる信念ようなものがあるのならいいのではないか。要は、世間がこうだからそうしているというふうになるなよという事なんだろうけど、便利すぎることが当たり前になると違和感を持つことすら出来ないし……と思ってしまう。そろそろ私もめんどくさい大人の仲間入りなのかも。思考して欲しいだけなのにそう思われてしまうのも寂しいなぁと引けずにいる笑 全く別の作品なのだけど 〝大衆から無駄と言われがちなものに傾倒し崇め救われてきたからだろうか。無駄を減らすことに躍起になっている人は、自分自身が無駄な存在だと気づいてしまった時どうするのだろう。本当に無駄ではないことなんて、無駄の中にしか存在しないのではないだろうか。〟 というひと文を思い出した。 𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠 P.191 世の中はどんどん便利になっていくし、目標の達成に費やす時間や手間だって大幅に省ける。だけど、だからといって、これは意味がないから、これは無駄だから、とあらゆるものを削ぎ落としていったら、そこに残るのは、誰にとっても必要なもの、誰にとっても意味があること、それだけだ。たったそれだけを身に付けた私たちは、確かにあらゆることが無駄なく遂行できるようになっているかもしれないけれど、きっと、心も体も同じ形をしている。 そうなると、重なり合ったところで、何の発見も、影響も、与え合うことができない。自分自身では引き起こせない感情の揺らぎに、出会うことができない。 誰と同じようにもなれないから、私は誰かの何かを探り当てたい。 その往復運動の中でのみ、私は、私だけができることに出会うことができて、私が私であることを知ることができる。 - 2026年7月15日
首木の民誉田哲也読み終わった税金の話。 国民の生活は日々苦しくなっていくのに、過去最高税率を記録して政治家の給料は上がり続ける日本の現実。 自分が払っている税金が何なのか、何に使われているのか。そんなことすらはっきり分からないまま、知る機会を得ないまま、死ぬまで絞り取られるだけなんて笑い話にもならない。 専門用語も多いけれど、解説してくれるのは大学教授ということもあってかなり分かりやすい。 個性的なキャラクター達の掛け合いも魅力的だし、社会派だと嫌厭せずにたくさんの人に読んで欲しいと切実に思う。きっと考えるきっかけになるはずだから。 𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠𓇠 P.176「────我々一般人には分からないような、と諦めてしまうのは、はっきりいって、あなたの悪い癖です。さきほど、マネタリーベースとマネーストックの話をし、日本にどれだけのお金があるのかを認識したら、一千二百兆円の借金が国家破綻の呼び水になるかどうかは、ご自身で判断できたじゃないですか。あの発想です。当たり前のことを、当たり前のように積み上げていけば、当たり前の答えにたどり着くんです。答えは出せるんです、誰にでも。それを、自分には分からない、分かるはずがない、分かりたくもないと、最初から諦めてしまうから、あんな陳腐な妄言に騙されるんです。誤魔化されるんです────」 - 2026年7月2日
ファイア・ドーム(下)辻村深月読み終わった⚠人によってはネタバレ気味の感想 身近に事件が起きた時、部外者たちは無責任に干渉し、関わろうとして、事実かどうか分からない噂を信じて広めるくせ、都合が悪くなれば当事者から外れる。 そんな浅はかな好奇心から生まれるのは、既に傷付けられ、声をあげることすら出来なくなった方や大切な人を失った方達の二次被害。 そういう所に焦点を当てたストーリー構成と真相だった。 自身のネームバリューから大々的に宣伝されることすら伏線にしていたと思う。 この物語の真相に対する反応は、あなたの心を映し出す。 他人に興味や関心を持つ時、その感情はどこから湧くのか、少しだけでも考えなければならない。 けして被害者にはなりたくないのに、大きな事件を求め魅了されるなんて、あまりにも軽薄だ。 これは私たちへの警鐘の物語。 - 2026年6月24日
ファイア・ドーム(上)辻村深月読み終わった二十五年前に起きた誘拐殺人事件。 そして現在、同じ家から再び失踪者が……。 人は皆、事件を求め、さらにそこには物語や特殊な背景があると信じている。 フィクションと現実は違うが、このあらすじに惹かれてこの本を手にするってもしかしたら危ないことなのかもしれない。 『悪意ではない。そこにはただ、信じられないほどの軽薄さがあるだけだ』 余談 やっぱりどうしても映像化を意識して書いてる感は否めない。孤城以降こんな感じだし、もうそういう作風になったと割り切るべきかな💭 - 2026年6月14日
魔王伊坂幸太郎読み終わった今、読むべき本かなと思い手に取ってみると、作中で起きていることが現実と重なり過ぎて背筋が凍る読後。 本著が刊行された当初より、人々にとってSNSは切っても切れない存在になった。錯綜する情報を正しく見極めることも、同調圧力や集団心理に負けずに、誰のコピーでもない自分の意見を持つことなど不可能に等しいのかもしれない。 それでも、圧倒的な大きな力に『仕方ない』と諦めることに慣れる事がどういうことかくらい自分の頭で考えなければならないなと再確認できた。 ────兄貴は負けなかった。逃げなかった。だから、俺も負けたくないんだよ。馬鹿でかい規模の洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ。 - 2026年6月5日
多類婚姻譚凪良ゆう読み終わった結婚なんて、今の時代は男であろうが女であろうがメリットの方が少ない。多様性の時代、人それぞれなんて歌われても、それでも未だ結婚・出産・家庭を持つことこそが一人前の証で幸せだというような風潮は残っている。 結婚して楽になったり幸せな部分もあれば、していないからこその喜びや自由さもある。 結局は自分がどうして結婚したいのかというのに向き合うべき。結婚は人生の通過点ではなく、ひとつの選択だ。 ほんのり朝井リョウ・辻村深月色を感じた。 凪良ゆうらしいといえばそれっぽいけど、凪良さんじゃなくても書けたような…本人の二番煎じ感も……という印象で直木賞候補には驚き。映画の宣伝がてらですかね。
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