
トラ
@Toreads1234
2026年8月16日
新! 店長がバカすぎて
早見和真
「あの」店長が帰ってきた。宮崎で店長代理補佐をしていた山本猛が吉祥寺に。そこで正社員になった谷原京子と繰り広げるドタバタコメディ。今まで人に怒られてこなかった次期社長は、谷原に一喝されてどうなっちゃうのか。天然新人バイト山本のバックストーリーと、今後の展望は。
メタ構造を取り入れたある書店の物語。
以下ネタバレ含む愚痴
やはり、谷原と店長を好きになれるかにかかってると思う。残念ながら自分は2人ともイマイチ愛せなかったから、物語と自分に距離が生まれ、距離が生まれるとアホらしいなと感じてしまった。専務とのスレ違いコントも恥ずかしくなった。父親も、ギリギリ乗れない軽薄さで、山本さんも許容できない二面性。
所々面白い表現があって、その表現力でなんとか読み切った。
ただ、評価とは別に分かりやすい笑いをやろうとすると、こういう方向性に向かう人もいるのだろうと。自分はあまり刺さらなかったが、そもそも「刺さる」ことを求めていない人もたくさんいる訳で、そういう人にとっての娯楽読書としては、これくらい分かりやすく、ドタバタしている方がいいのかもしれない。書店員の苦境を描いた本作が、作者の思う「自分の持っている売れるメソッド山盛り本」なのだとしたら、恩返しとして筋が通ってるし、格好いい。
もう一つ悪口を書くと説教臭い。
作中作のある小説について
「素直な気持ちでそれを読んで欲しい。小説に限らず、創作物っていくらでも難癖をつけられるものだろう?(中略) それを補って余りあるおもしろさや文章の美しさ、熱量みたいなものを全て無視して、それらしい批判はできるはずなんだ。今回だけはそういう見方を排除してもらいたい」(p.245)
とか
「読者は作家のたった一冊の駄作を許さない。いや、本当に駄作であったのならまだしも、自らの心理状態によって受け入れられなかった本をつかまえ、あの作家は終わったと断じ、二度と戻ってくることはない。」(p.258)
みたいな言い訳がましく、書店員という役柄を利用した作者の本音と読まざるをえない文章が散りばめられている。それをセリフとか内言語ではなく、物語で表現するのが作家やろがい!
前作中で大西賢也という作家がデビュー作で熱いものを書いて、そのあとはイマイチ。そこから例の作品で盛り返すというストーリーがあり、それをもっと盛り立てれば、この説教臭いセリフが伝わるのに。
読みやすい。面白いところもある。ただ、自分向きではなかった。