
のぼりおり
@noboriori
2026年8月17日
脳科学者の母が、認知症になる
恩蔵絢子
読み終わった
内容はタイトル通り。認知症になった母親のエピソードを語りつつ、なぜそうした言動が発生するのかを脳科学の視点から解説を試みる1冊。
「試みる」としたのは、「脳科学に言うと認知症のこうした言動にはこんな原因があります、はい一件落着ですね」というスタンスではないからだ。いわゆる健常者からは理解しがたい認知症患者の言動をとっかかりに、むしろ"健常"なるものの不思議さや曖昧さへとその視点は向かっているといえる。特に記憶や感情に関する解説は興味深く、まわりの人たち、そして自分自身の日々の過ごし方に意外な見方を与えてくれる。
脳科学者である著者が、認知症のすべてを理解し、母親に常に万全な対応をするわけではない。自分の作った手料理を食べてくれない母親に苛立ってしまう姿も赤裸々に語っている。しかし、病前とはすっかり変わってしまった母親の言動にも、仲が良く、娘(著者)を大切に想う母親の"らしさ"を見つけようとする姿勢は確かである。
「もしも自分が著者と同じ状況に置かれたらこうありたい」と言うのは現実を知らない理想論かもしれないが、少なくともそのための視座を示してくれる良書だった。


