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のぼりおり
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@noboriori
  • 2026年9月11日
    プルースト効果の実験と結果
    女性を主人公とする恋愛短編4作を収録。 巻末解説で間室道子さんが「『なつかしいなあ』ではなく、私は本書の読書中、青春のただなかにいた。」と書いているが、まさにそれだ!と思った。 私は男性なので女子高生だったことはないし、収録作を読んで「わかるわかる、恋愛ってそういうことあるよね〜」という共感が生まれたわけではない。ただ、登場人物と淡い悲しみを共有するような、同じ時間、同じ空間で彼女らと経験を共にしていくようなそんな作品群だった。 特に表題作は、受験勉強期を舞台に「たけのこの里」「きのこの山」を使ったプルースト効果の実験、そして図書館と静かながらどこかチャーミングな司書という設定からして惹き込まれる。「小川さん」の人物描写も印象的で、「はじめてのキスは想像もつかないところでしよう」なんていう台詞を効果的に置けるのはその描写あってこそだろう。だからこそ、主人公が小川さんとの記憶をか細い手で辿っていくような過程は胸に迫る。とはいえ、恋愛が終わってしまった悲しみを単に描くのではない、多少いびつながらも前を向こうとする若さに読後感がよかった。
  • 2026年9月7日
    長い一日
    長い一日
  • 2026年9月7日
    「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦
    『意識と本質』『意味の深みへ』を読んだ際に井筒俊彦の思索がもつ射程の広さと深みに、(理解が及ばない部分も少なくなかったが)大きな面白さを感じたし、いまでも「この話は井筒が言っていたあの議論と似ているな」などと思うことがある。 本書は「ある」「空」「無」などをめぐる「東洋」哲学の考え方、そしてその根底に迫ろうとした井筒の思索を追う。なお、「東洋」が括弧付きになっているのは、仏教やイスラーム、インド哲学といった地理的な東洋の哲学だけを領域とするのではないからである。 終章では井筒が突き詰めなかった部分にまで踏み込み、著者なりの論を示しており、その着地点は意外性もあり面白い。あらためて井筒俊彦の著作にも手を伸ばしたくなった。
  • 2026年8月31日
    オルゴーリェンヌ
    「少年検閲官」シリーズの第2作。前作よりも物語は長く、起きる殺人事件も多く、そして用いられるトリックの数も質も上回っている。 世界観設定が独特であり、かつファンタジック、しかも冒頭からくどいくらいにこの世界観を押し出してくるために「ミステリー小説を買ったはずなのにこれは一体...」と感じるタイミングがあったのは事実。しかしながら、まさにこの過剰なほどの世界観があるからこそ、ラスト数ページのカタルシスは素晴らしい。 トリック、特に塔の密室トリックは好き嫌いがわかれそう。だが、本作だからこその盲点を突いたのは面白い。
  • 2026年8月27日
    ホームレス夫婦、「塩の道」1014キロを歩く
    ホームレス夫婦、「塩の道」1014キロを歩く
  • 2026年8月27日
    この世にたやすい仕事はない (日本経済新聞出版)
    仕事に疲れて帰ったりしている時に、他人を見てふと「楽そうな仕事でいいなぁ...」と思うことがある。自分ばかりが大層な仕事をしていて、自分ばかりが疲弊していく、と思い込んでしまうような。 実際はそんなことはなく、たとえばこの小説に出てくる「おかきの袋裏に書かれている豆知識を考える仕事」「町の循環バスで流れる広告アナウンスをまとめる仕事」にも、面白さがあり楽しさがありやりがいがありミステリー(?)があり、そして大変さがある。 別にこの小説は「あらゆる仕事にはやりがいがあるよ!みんな頑張ろう!」ということでもなく、「仕事なんていう資本主義的ゲームからはとっとと降りてスローなライフを送ろうよ」という話でもない。この小説を読んだから明日からの仕事が楽しくなるわけでもない。ただ、それなりに清く正しく一生懸命に働く自分と周りの人たちへのリスペクトが増すような、そんな1冊。
  • 2026年8月25日
    行人
    行人
    他人のことがわかる、とはいったいどういうことなのだろうか。我々はお互いにわかっている感を演出することで日常を平穏に過ごし、心の平生を保とうとしているが、実はわからなさこそが他人なのではないか。 こう考え出すと、本作の一郎のような袋小路に入ってしまうのか。『彼岸過迄』の感想で「登場人物がみんな少し変人」ということを書いたが、夏目漱石はこの絶妙な人間関係、男女関係のブラックボックスを描くのがあまりにも上手い。単なるあるあるでもなく、極端にドラマチックでもない、人物描写の上手さ。重厚なテーマながら読み疲れさせないあたりもさすが。
  • 2026年8月17日
    脳科学者の母が、認知症になる
    内容はタイトル通り。認知症になった母親のエピソードを語りつつ、なぜそうした言動が発生するのかを脳科学の視点から解説を試みる1冊。 「試みる」としたのは、「脳科学に言うと認知症のこうした言動にはこんな原因があります、はい一件落着ですね」というスタンスではないからだ。いわゆる健常者からは理解しがたい認知症患者の言動をとっかかりに、むしろ"健常"なるものの不思議さや曖昧さへとその視点は向かっているといえる。特に記憶や感情に関する解説は興味深く、まわりの人たち、そして自分自身の日々の過ごし方に意外な見方を与えてくれる。 脳科学者である著者が、認知症のすべてを理解し、母親に常に万全な対応をするわけではない。自分の作った手料理を食べてくれない母親に苛立ってしまう姿も赤裸々に語っている。しかし、病前とはすっかり変わってしまった母親の言動にも、仲が良く、娘(著者)を大切に想う母親の"らしさ"を見つけようとする姿勢は確かである。 「もしも自分が著者と同じ状況に置かれたらこうありたい」と言うのは現実を知らない理想論かもしれないが、少なくともそのための視座を示してくれる良書だった。
  • 2026年8月15日
    小さきものたちのオーケストラ
    小さきものたちのオーケストラ
    前作の『ぼくらが漁師だったころ』は個人的オールタイムベスト級に素晴らしかったが、続く本作も傑作だった。 精霊を語り手として、その宿り主の数奇な運命を描くという独特の設定。巻頭に宇宙論の図解があったのはさすがに面食らったし、本編が始まっても最初の頃はわけわからん部分も少なくないが、読み進めていくと意外と慣れていく。 前作もそうだったが、大掛かりな陰謀や策略に巻き込まれるわけではないのに運命論的にじわりじわりと悲劇へと転じていくさまはかなりの読み応え。また精霊を語り手とすることで、心理描写も説明臭くならずに読ませる。 3作目である『The Road to the Country』の邦訳も待ちたい。
  • 2026年8月8日
    江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす
    『敗戦後論』を批判するアメリカ学術界に対する反論が初公表されて、加藤典洋が目下再注目と再評価、そして再批判されているが、私はちょうどこの本を読んでいるところだった。 加藤典洋と江藤淳という2人の文芸評論家が、戦後というものにどう向き合ってきたかを彼らの言葉を引用しながら丹念に迫る1冊。前半〜中盤は江藤淳への言及が多く、後半は加藤典洋が中心。『限りなく透明に近いブルー』をめぐる話題が非常に興味深かった。 ともすると危ない保守派とされがちな江藤淳、そして『敗戦後論』の賛否両論で論壇からの評価が定まらない印象のある加藤典洋だが、両者ともに国家や憲法、歴史といかに真剣に対峙してきたがわかる。特に後半の加藤典洋に関するくだりは、評論という営みそのものを読み解く試みなのではないか。 與那覇さんの著作はけっこう読んできたが、冷静な筆致はもちろん、引用される本や論考に気になるものが多く勉強になる。今回も、何度か引用される加藤、江藤、竹田青嗣の鼎談があまりに面白そうで、掲載されている『批評の戦後と現在』をポチッてしまった。
  • 2026年8月3日
    火星の女王
    結晶構造が同期して変化する「スピラミン」やら、「国際宇宙開発機構」やら「ネメシス5」やら、いかにもSF的な用語を使いながら、100年先の火星と地球を舞台にストーリーは進行するのだが、結局は100年先も人類の内側で「敵だ、味方だ」をやっているという皮肉。 人々の頭上に渦巻くのは最先端テクノロジーと見せかけて、結局は言葉であり、ある種の物語。リリが「火星の女王」に祭り上げられていくさまには、英雄(という物語)を求めざるをえない人類の滑稽さすら見え隠れする。この人類の性質をわかっていたのがマディソンであり、彼は言葉と物語をもってして人々を動かそうとするが、実はその中身は空虚だったのでは。 ラスト近く、リキ•カワナベは「そもそも、どうして我々は存亡を賭ける事態に陥ったんだ。地球は火星を理解せず、火星は地球を理解せず、お互いがお互いの間に勝手に線引きをしたからだろう」と言う。ごもっともである。火星vs地球の戦争、という物語を構築するとみせかけて、「だからなんだ」ってことでその物語を解体する。読者への牽制球というか、突き放しが面白い。 そして、この突き放しを経るからこそ、最後の最後にあるやり取りがとても素敵だった。特にラスト1行、この小説の最後にこの台詞は沁みた。
  • 2026年7月31日
    テニスコートの謎
    テニスコートの謎
    テニスコートの真ん中で死体が見つかり、あるのは被害者ともう一人の足跡のみ。そして、この足跡に絡むある種の隠蔽工作がストーリーに読み応えというか展開の楽しさをつくっている。このあたりの上手さはさすがのカー。 ただ、このトリックは小説で読まされても面白みが無いなぁ...。破綻もないしよくできているのだが、文章で説明されるとうーんという感じ。『墓場貸します』の謎解き読んだときに近い感想だった。
  • 2026年7月27日
    邪宗門 下
    邪宗門 下
    上巻の感想で「おそらく、集団としてハッピーエンドに向かっていくことはないだろうから、恋愛要素を絡めながら個人の物語に収斂させていくのだろうか。」と書いたが、そんな甘っちょろい小説ではなかった。新興宗教という集団を徹底的に煮詰めて煮詰めて煮詰め続け、後半は怒涛の展開だった。 終戦によって価値が転倒し、戦中は正義とされたことが戦後は不義となり、戦中は偉ぶっていた人らがこそこそ消えていく。とはいえ、支配する者と支配される者、権力の理不尽さは変わらない。価値転倒してもなお世間がそういう状況なのであれば、"世なおし"は最終手段ともいえるほどに過激化していかざるをえない。絶望的な貧困から這い出て「ひのもと救霊会」に拾われた千葉潔という人物が、結局はもう一度世間に絶望する物語だったのではないか。 「•••救霊会はたしかに<邪宗>だった。淫祠邪教の故に邪宗であるのではなく、窮極において、この世を信じえず享楽しえない人々の集団であるゆえに。」(下巻 543頁)
  • 2026年7月23日
    邪宗門 上
    邪宗門 上
    上下巻で、上巻は第二部の途中まで。 ある集団に焦点を当てつつ、群像劇として時代の動きや精神性を描いていくのは北杜夫の『楡家の人びと』に似ている。 苦しむ人々を救おうとする宗教が「ではその苦しみの原因は何か?」と突き詰めていくと、"世なおし"として天皇や政治家、警察といった権力との対峙に至らざるをえない。新興宗教を舞台とする小説ではあるのだが、その言葉でイメージされがちな内閉性ではなく、むしろ外部とどう向き合う(向き合わざるをえない)かが物語のベースにあるような気がする。 おそらく、集団としてハッピーエンドに向かっていくことはないだろうから、恋愛要素を絡めながら個人の物語に収斂させていくのだろうか。ラストに向かってどう落としどころを探っていくのか、初読の作家だけに下巻が楽しみ。
  • 2026年7月17日
    黒人理性批判 (講談社選書メチエ)
    黒人理性批判 (講談社選書メチエ)
    奴隷制やアフリカ植民地化の背景にある、西洋による「黒人」「人種」という名詞•概念を解体しながら、いまも目の前にある人種差別を考える糸口を示す。 後半は特に難解で理解が及ばなかった部分も少なくないが、解説でなんとか補足。フランツ・ファノンへの参照が多く、やはり一度は同氏の著作を読まなくてはならないとあらためて。
  • 2026年7月14日
    長い一日
    長い一日
  • 2026年7月12日
    屋上
    屋上
    「自殺なんかしない」と断言した人間も含めて、ビルの屋上から次々と人が飛び降り死亡するが、屋上には他殺の痕跡もない。はたして何が起こっているのか? という非常に興味そそられる設定で、「間違って女子トイレに入ってしまいガードマンに追い詰められた男」「仕事用のサンタクロース姿でビルのトイレ借りたら閉店時間過ぎてしまい外に出られなくなった男」「やや背は低いがトム・クルーズ似のイケメンと何故か結婚することになった大阪弁の女」など、はたしてどう交わるのかわからないエピソードを最終的に回収していくさまは楽しい。 が、謎解き自体にはかなり無理があるうえ、肝心な箇所の詳細な説明や図解がないためにアンフェアな印象は否めない。この著者ならではの突飛なアイデアをおおらかな気持ちで楽しむくらいがちょうどいいのでは。
  • 2026年7月8日
    言語が違えば、世界も違って見えるわけ (ハヤカワ文庫NF)
    ホメロスはなぜ海を「葡萄酒色」と表現したか?など、気になるトピックをとっかかりとしながら、言語学がどのように言語と思考の関係性を考え、実験してきたかを紹介していく1冊。 特に後半は、どういった実験が行なわれてどのような結果になり、そこから何が言える(あるいは言えない)のかという記述が続き、また「実は言語と思考の関係はこうなっていたんです!!」的な衝撃の事実が明らかになるわけではないので、そのあたりを期待すると退屈かも。 ただ、さまざまな研究者が言語をどう捉えてきたかなど、興味深い話が多く、ここを起点にまた別の言語学に関する本に手を伸ばしたくなった。
  • 2026年7月5日
    夏帆
    夏帆
    浦和やら武蔵境やら妙に生活感ある設定ながら、謎に満ちた出来事を絡めつつ、いま目の前にある世界の奥底へと誘う感じは村上春樹の面白さ。 ただ、登場人物があまり印象に残らないからか、ところどころにある「境界線が〜」などのくだりが露骨すぎてうざったく感じてしまった。ありくい夫婦の存在感はよかったが。
  • 2026年7月4日
    イスラーム精肉店
    イスラーム精肉店
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