
あんどん書房
@andn
2026年8月16日
青天
若林正恭
読み終わった
弱小チームである総大三校アメフト部の三年、中村昴(アリ)が強豪校、遼西学園の練習を盗撮しにいく場面から始まる第1Q(クォーター?)。
盗撮がバレつつもチームメイトの河瀬が見出した勝利の可能性に向け一同は士気を高めてゆく。
“フィールドに走る試合前の緊張感。ここから約2時間、1ヤードでも、1インチでも、前に進めばいいだけの存在になれる。それはいつも俺の救いだ。”(P63)
しかし、遼西の強さは圧倒的で、アリも試合中に「アオテン」させられてしまう。
“アメフトにおいて、仰向けに倒されることはアオテンと呼ばれていて、最も屈辱的な状態だ。チームメイトも、ギャラリーも、敵さえも静まり返っている。”(P67)
こうして彼らの戦いは呆気なく終わってしまい、引退したチームメイトたちが受験に向けて切り替える中、アリは大学を目指す気も起きずにいる。
元チームメイトのつながりから不良グループに接近するも、自由でいるようでそのグループ内の決まりに従っている彼らのことを内心ダサいと思っている。こういう捻くれ具合、めっちゃ若林正恭。
あと倫理の先生に色々聞きにいくくだりも若林さんらしいなと思う。実際に大学生の家庭教師つけていろいろ教えてもらっていると対談で話されていたし。
不良グループと一悶着ありボコボコに殴られたアリは、後輩からの声掛けで再び部活に戻り、本来三年は出場しない秋大会を目指すことになる。
“クラスの一軍の人気者とかじゃなくて、元いじめられっ子の復讐でもない。すべてが中途半端。語るべきことが何もない。だから、人にぶつかってないと自分が生きてるかどうかよくわからなくなる。”(P132)
この展開の構成、すげえ上手いな。本当に初小説??
第3Qは特訓編。舞い戻った部活では新キャプテンのチョモこと高山が、チームメイトのモチベーション維持に悩んでいた。アリは言葉で言うより力を見せつけるしかないと諭し、特別メニューの朝練を始める。
うおおお。青春部活ものだー!
そしてついに迎えた秋季大会。やはり強豪の池ノ上高校との対戦。中盤まで苦戦し、得点を得ることができず。しかし極限に回想が挟まって覚醒し「1秒後が見える」境地に達するところはあまりにもスポーツ王道もので、胸が熱くなる。
そんなスポ根でありつつもやはり倫理の先生との対話が挿入され、シーシュポスの岩運びみたいな話が出てくるのが面白い。この話、だいぶ國分メソッド入ってるよね?
最初の方に「捻くれ方が好き」みたいなことも思ったけど、改めて考えるとめちゃくちゃ純粋な作品だったなと思う。著者自身が見てきたもの、感じてきたこと、学んできたものがものすごくストレートに込められている。やっぱ芯に熱情があるんだろうなぁ。でなきゃこんな熱い作品書けまいて。
