
ドッグストエフスキー
@dogstoevsky
2026年8月18日
ジェイムズ
パーシヴァル・エヴァレット,
パーシヴァル・エヴェレット,
木原善彦
読み終わった
【ネタバレあり】
本作は『ハックルベリー・フィンの冒険』の登場人物・筋をなぞりつつ、オリジナル展開もある、「ジム」を主人公にした小説である。
本作の奴隷たちは生き抜くために白人の前では愚かさを演じ、その真の姿は現代的な合理性を持つ知的な人物たちである。彼らは無神論で、ジムに至っては夢にヴォルテールやジョン・ロックが出てくるような深い教養を持っている。
私は『ハック・フィン』のファンなので、今作のジムには違和感を持った。どれだけ賢いとはいえ、あの時代のアメリカ大陸に住む人物があそこまで信仰心がないのはおかしいし、サヴァイバルのためとはいえ、このジムはどこまでも打算的で、ハックを特別に目にかけるのも、実は血縁関係があったからだ。私の知るジムは誰にでも親切にする人だから。
とはいえ、原作のジムにも違和感がないわけではない。ジムには妻も子供もいるのに、大人らしくないし、性的な匂いもなにも感じさせないし、ご都合主義のようにハックの父親の死を隠蔽する。そう、ジムは嘘をつける人物なのだ。その事実を極限まで拡大し、マーク・トウェインですら煙に巻くような皮肉である「極端なまでに合理主義で知的な黒人像」を塗したのが本作なのだろう。
ハックをジムの子供にしたのは面白いギミックだった。ハックはこれまで白人のヒーローだっただろうから。