
ドッグストエフスキー
@dogstoevsky
2026年8月19日
息吹
テッド・チャン,
大森望
読み終わった
面白かった〜〜!!!一編一編が濃密で重厚。長編小説みたい。どうなるのか気になる作品が多くて、一作一作が重いのについつい読んでしまった。
本作のテーマは自由意志だと思う。自由意志があるのかないのかに留まらず、ではどうすればよいのか?までメスを入れる。本作ではおおよそ自由意志はない。しかし、神が奇跡を行ったことが明らかになった「オルファロス」の時空だけ、神の不在、というか神の無関心を受け入れて、自由意志を生み出す。
テッド・チャンの結論としては、「自由意志があろとなかろうと、まあ今を生きていくしかないよね」。彼の描く登場人物はひりひりした現実ないし事実を目の当たりにしながらも、希望や勇気や価値や善意というのを信じる。
ハードSF作家だけれど、テッド・チャンは案外保守的な人だと思う。これほどSFの設定を用いているのに、彼の興味関心は家族とか母性とか親子とかにある。特に母性には特別な信頼があるように思える。彼の小説に出てくる重要な女性登場人物は男性とのパートナーシップよりも、子供を育てることに興味を持つ。『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』のアナとか、『あなたの人生の物語』の主人公とか。他の女性登場人物も男性にはそこまで重きを置いていない。『オムファロス』のドクターは科学と神のことばかり考えているし、『不安は自由のめまい』のナットは自分の人生で手一杯だ。その一方で、男性たちは女性たちを求める。性的・ビジネス的なパートナーや、娘として。
これを読んだことを機に積読チャンネルの本作の回を見直したら、堀元さんがまったく同じまとめ方して笑いました。
以下、それぞれの短編の簡単な感想。
商人と錬金術師の門ー千夜一夜物語の体裁を取ってるだけあって昔話みたい
息吹ー表題作。最も詩的。
予期される未来ー短いながらも秀逸。
ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクルー先が気になってぐいぐい読んでしまった。人間らしい感情を持つディジエントを最も求める会社がラブドール製作会社というのは納得いった。『ヒトは生成AIとセックスできるか』を読んだ時も、高性能ラブドールを作る人たちはセックスに興味あるというよりも、「人間らしさ」を再現することに心血を注いでいた。ラブドールが担う親密な領域がその対象として最も適していると彼らは判断している。本作では、秘書的な役割としては情緒性に欠けるディジエントが人気を博している。たしかに我々はビジネス空間はより非人間的に、親密な空間だけに「人間らしさ」を閉じ込めようとしてるかも。もう少し長い話でもよかった。消化不良感あるかも。
デイシー式自動ナニーー独善的な近代的な男性への皮肉
偽りのない事実、偽りのない気持ちー人間って事実に耐えられない
大いなる沈黙ーこの話好き。
オムファロスーこの話もよかった。神の不在を経て自由意志を信じる。
不安は自由のめまいー自由意志ってないんだかあるんだかで締める



