ねむみん
@nemumin
2026年8月19日
六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成
読み終わった
数日空いてしまったけれど読み始めるとやっぱり手が止まらなくなり勢いのままに読了!中盤には想像もしていなかった爽やかな真実と結末にびっくり。
どんでん返しが何度もあって、幾重もの伏線が非常にスマートに張り巡らされていて、騙されるのが気持ちよかった。
そして波多野くんを聖人として描き切らないところがよかった。腹黒大魔王っていいあだ名だね。そんな一面も含めて愛されていたことが窺える。
以下は野暮で冗長な感想。
嶌は九賀のことが好きだったんだなあ。ずっと投票していた。九賀に写真を見せてボロを出させた時、もとよりそのつもりで追求していたはずなのにひどく動揺して無言になっていた。
森久保以外が嶌さんを疑っていなかったのが引っかかった。矢代は波多野が嶌に好意を持っていたことに気づいていたが、よく周りを見ている袴田だって気づいていただろう。というか一番機微に疎そうな森久保が気づいていたんだから誰が見てもそうだったはずだ。そうなると、矢代と袴田が嶌犯人説に辿り着かなかったのは、「嶌さんがあんなふうな写真を撮って回るのは難しいはず」という思考があったんじゃなかろうか。矢代は8年前に優先席を促すくだりがあったし、袴田は8年後に公園でベンチに座るよう促している。きっと芝生に座るのは骨盤に負担が大きいだろう。
九賀はきっと本心から波多野くんのことを評価していたんだろうな。そうじゃないと、「一番票を集めるであろう人が失墜する」というシナリオの犯人に仕立て上げない。
もしくは逆に、嶌に仄めかした通り波多野にも悪どい過去があり、最も軽蔑したために陥れた可能性もあるけど。
(正直その線は薄いと思う。嶌のことも「ろくでもない人間」と評す九賀の判定基準は明らかに並より厳しく、波多野に関してはデキャンタ事件で好きな女に無理やり酒を飲ませるクズとでも決めつけたのだろう。飲酒の証拠写真は九賀本人が収集している。波多野の悪事を告発する者は現れなかったと見える)
波多野の腹黒な一面は最後の封筒で垣間見えた。でも結局は、あの封筒を出さずに終わっている。当然これまでの好青年な彼が嘘になったわけではない。きっと他の5人と同じく、良いところも悪いところもある人だ。
嶌の、「私を犯人だと勘違いしたままなのか」というしこりが消えただけでなく、再選考の切り札として嶌の封筒を差し出さんと策略する「裏側」まで見えて、ようやく波多野という人間を理解できて自然な笑みが溢れる。何度もひっくり返された物語がこんなにシンプルで爽やかな結末になったことが本当に素晴らしい。記憶が薄れた頃にまた読みたいと思う。