ゆい "背表紙の学校" 2026年8月21日

ゆい
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@no1sin
2026年8月21日
背表紙の学校
背表紙の学校
奈倉有里
>夕方になっても私は木の上から降りようとせず、父が「もうご飯だから降りておいで、降りてこないと玄関の鍵を閉めちゃうよ」と呼んでいる。一度はそう言われてしぶしぶ降りたが、悔しいので二度とそんな脅しに屈してたまるかと、次のときは家の鍵をポケットに入れて木に登った。夕方になって父が懲りずに同じことを言って呼びにきたので、「もってきたもん!」とポケットから鍵を出して見せびらかすと、父は「そりゃあやられた!」と大笑いした。家に帰ってからもまるで私がものすごい偉業を成し遂げたみたいに「このまえ僕が『鍵を閉めるよ』って言ったもんだから、こんどは鍵を持って木に登ったんだって」と母に報告し、「いやあ、まいったまいった」と楽しそうに笑っている。 ふだんから大人があまり笑わないことに不満を抱いている子供にとって、大人が本気で笑うのは紛れもない大事件だ。生きていることを肯定されたような心持ちになって、「やっぱり大人って、もっと笑えばいいのに」と感じる。(P.195)
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