無限の上機嫌! "緩やかさ" 2025年4月2日

緩やかさ
緩やかさ
ミラン・クンデラ,
西永良成
 次になにを読もうか考えていて、ふと半年まえに買ったままになっていた『緩やかさ』のことをおもいだした。冒頭部分から読みはじめた。  おそらく郊外の夜道を車で走る夫婦がいる。バックミラーごしには、二人の乗った車を追い抜こうとランプを点滅させる車が見える。それに気づいた妻が夫に「無謀な運転」について問いかける。夫は、その答えから三〇年まえにつきあいのあった「エロチスムの幹部党員」というような面持ちで、オルガズムについて語ったアメリカ人女性のことを思いだす。 〝オルガスム崇拝は、性生活に投影されたピューリタン的功利主義、無為に反対する効率であり、性交を障害に――愛と世界の唯一真の目的である忘我的な激発に到達すべく、できるだけ速くのりこえなければならない障害に変えてしまう。〟 〝私たちの世界では、無為は無聊に変わってしまったが、これはまったく別のことなのだ。無聊をかこつ者は欲求不満で、退屈し、自分に欠けている動きをたえず求める。〟 〝しかし私に言わせれば、快楽主義のアキレスの踵[弱点]は利己主義ではなく、(ああ、私が間違っていればいいのだが!)その絶望的なまでにユートピア的な性格なのだ。〟 〝最初は楽しげで淫らな戯れとして現れるものが、それと知られないまま、不可避的に生死を賭けた闘争に変ずるのだと。〟 〝なぜ、緩やかさの快楽が消えさってしまったのだろうか?〟 快楽、目的、闘争。
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