
阿久津隆
@akttkc
2026年8月9日
八月の光
ウィリアム・フォークナー
読んでる
ハイタワーは「まったく、最も高遠な書物も、実際の人生に適用すると、嘘だらけのものになるんだなあ」とのんびり考えてから結婚をして、「うん、そうか、なるほど。それが皆のするやり方だね、特をするやり方だね。それが方法というわけだ。やっと分ったよ」と考えて、ふたりはジェファソンに向かう列車に乗った。ハイタワーが明るい声で、「あのね」と話し出して、「あのね、一般の市民の気まぐれ行為と軍人の気まぐれ行為は違いがあるんだよ」と教え諭すように話し始めて、優しい口調で話し続けた。
p.626
目に見えるようだろ、聞えるようだろ、わめき声、銃の音、勝利と恐怖の叫び、轟く馬蹄、恐怖で釘づけされたように赤い空にそそりたつ樹、爆発する最後の地球のギザギザのように見える家々のひさし。もと近くに行くと、君は感じるよ、聞けるんだ、闇の中で馬が突っこんできて止る、武器のがちゃつく音、大きすぎるささやき声、荒い息づかい、まだ勝ち誇っている声、彼らの背後では集合ラッパのほうへ駆けてゆく残りの騎馬隊。それを君は聞くだろ、感じるだろ
ハイタワーの声は高く、大きく、列車内に響き渡り、妻は、シーーーー! シーーーー! みんながあなたを見ていますよ! しかし彼はまるで聞こえないように話し続けて、ハイタワーの血走ったふたつの大きな目が見えるようだった。