@sotaono
2026年8月22日
p12
「つまり、考えて考えて考え抜いたことに対して、神様が褒めてくれる、そのプレゼントが「閃き」というものなのだと信じた。」
p12
「それから、僕がその体験から学んだ最も大事なことは、自分がしたいことをする、したくないこともしなければならないけれど、それは、したいことをするために必要な準備、あるいは練習だと考えた。」
p77
「僕にとっては、本だけが本当の「大人」だった。」
p77
「世の中は捨てたものではない、とやっと信じることができた。二十代の前半でこのことを知ったのは、本当に「救い」だった。知らないまま社会に出ていたら、僕はずっと人間の価値がわからないまま生きていくことになっただろう。心のどこかでは必ず人を疑っている人間になってしまっただろう。大袈裟ではなく、この歳になってやっと信じられるものを見つけた気がしたのだ。」
p80
「「元を辿るとね、そもそもね、他人に認めてもらうことが、信じられないくらい面倒な行為だよね。これよりも面倒なことって、そうそうないというくらい面倒だ。くわばらくわばら。」」
p81
「つまり、遠くが見えるようになって初めて、遠くがあることを知る。そして、もっと遠くがあることが予想できるのだ。」
p83
「「自己満足できたら、それはもの凄く良い状態だね。自分が満足できるなんて、そんな素敵なことはない。それは価値が大ありだ。」」
p103
「固有名詞は、それ以上意味がないものであり、そのまま鵜呑みにすれば良い言葉だ。」
p108
「道は自分で見つけ、自分で作らなければならないからだ。」
p111
「また登ることができる。まだ登ることができるのだ。」
p117
「人が人をどう捉えようと、それは自由だし、何が正しくて、何が間違っている、という問題ではないから、議論をしても嚙み合わない。こういうときに自分の意見を誇示しないのも、僕が冷めた人間だと思われる要因だろうか。自分という人間を他者に正しく理解してもらいたい、という欲求が僕にはやや乏しい、というふうにも分析できる。」
p134
「難しい、言葉というのは。言わなければ気持ちは伝わらないが、言えば言おうとした姿勢を誤解される。だから、たとえば、誰にもわからなくていい、という謙虚さなどは、けっして精確に伝わらない。伝えることで矛盾が生じるからだ。」
p140
「「私ね、ずっと貴方のことを見てきたの、ずっと、この四年間だよ。」」
p145
「「それができたら、今の今まで、こんなふうにはならなかったわけだよ。もう、悩み続けた四年間でしたよ、本当に……。恨みがましいことは言いたくないけれど、君がもしいなかったら、私の大学人生、もっとハッピィだったかも。」」
p148
「「君のことが好きだった。あ、違う、ごめんなさい、過去形になっちゃった。もう一度……、君のことがずっと好きで、今でも好きだよ。ほら、言えた。言えたでしょう?言わなくても、もしかして、わかってた?」」
p168
「良い経験になった、という言葉で、人はなんでも肯定してしまうけれど、人間って、経験するために生きているのだろうか。今、僕がやっていることは、ただ経験すれば良いだけのものなんだろうか。」
p171
「「だから、普段から、いつも自分の心のまま、考えたまま、正直に言葉にするようにした方がいい。そういう習慣を身につけた方がいい。それが誠実な研究者というものだ。親しい人に対しても、駄目なときは駄目という。いけ好かない奴でも、そいつの言っていることが正しければ、拍手を惜しまない。信用できる研究者っていうのは、そういうものだ。感情なんてちっぽけなものに流されてはいけない。」」
p234
「この王道が意味するところは、歩くのが易しい近道ではなく、勇者が歩くべき清く正しい本道のことだ。学問には王道しかない。それは、考えれば考えるほど、人間の美しい生き方を言い表していると思う。美しいというのは、そういう姿勢を示す言葉だ。考えるだけで涙が出るほど、身震いするほど、ただただ美しい。悲しいのでもなく、楽しいのでもなく、純粋に美しいのだと感じる。そんな道が王道なのだ。」
p280
「まさにスペシャル・タイム、これと同等に劇的な出会いというのは、軌道上の人工衛星のランデヴーくらいではないか。確率的には、それよりも小さい気がする。」
p288
「だから、飾った言葉、噓の混じった言葉を口にするくらいなら、黙っていた方がましだ。」
p308
「なんという平和だろう、と気がついた。いつまでも、こんなに静かな生活が続けば良いな、これが幸せというやつでは、と思った。」
p311
「「どうしてかなぁ。なんとなくだけれどね。うん。つまり、理由を言葉で聞いても、結局はその意味するところは、抽象化できない。抽象化できないものは、つまり理解できないものなんだ。言葉を聞いても、理解したことにはならないんだ。」」
p312
「「良かったぁ。」「何が?」「ありがとう。おやすみなさい。」」
p313
「つまり、君は、僕の人生と自分の人生が関係あると考えているんだ。そうだね、僕もそう考えているみたいだ。そんな気がしてきた。」
p314
「夜通し、考えても良いし、星を眺めても良いし、何だって自由にできるんだよ。彼女を、少しでも自由にさせてあげたい、と僕は思った。頭の普段使わない部分を使ったみたいだ。ちょっと、疲れたかも。そうか、こういう感じなのかな……。普通の生活って。おやすみ……。」
p318
「とても不思議なことに、高く登るほど、他の峰が見えるようになるのだ。これは、高い位置に立った人にしかわからないことだろう。ああ、あの人は、あの山を登っているのか、その向こうにも山があるのだな、というように、広く見通しが効くようになる。この見通しこそが、人間にとって重要なことではないだろうか。他人を認め、お互いに尊重し合う、そういった気持ちがきっと芽生える。」
p320
「というよりも、そもそもその山は、自分が作っているんじゃないかな、とも思うのだ。」
p336
「「何?プロポーズ?ああ、そうだな、まあ、提案したわけだから……。うん、間違いではないか。」」
p337
「「誠意も信念も、ときどきは外部に示さないといかん。」」
p340
「こんな男が世の中にいるのか、ということに感動した、といっても良い。」
p341
「そうにちがいない。それでこそ、喜嶋先生だ。僕は、とてもすっきりした。喜嶋先生に対して、唯一引っかかっていたものが、綺麗に取り除かれた気分だった。この人は本当に尊敬に値する人物だ、ほかにいない、ナンバ・ワンだ、と僕は確信した。」
p346
「喜嶋先生ほど、クリーンでサイレントに生きている人を、僕は知らない。探せば沢山いるはずだけれど、きっと、透明で無音ゆえに、見つからないのだろう。先生だけは、たまたま僕がすぐ近くにいたから、存在を知ることができたのだ。」
p348
「こうして、清水スピカが僕の奥さんになった。」
p348
「結婚式のときには、もちろん喜嶋先生を招待した。」
p353
「「あ、では、その代わりに、歌をうたいましょう。」喜嶋先生はおっしゃった。「マイウェイをお願いします。」」
p369
「あのとき……、先生は嘘を言わなかった。先生の自信は本物だったのだ。」
p374
「もしそうなら、僕は、その人が羨ましい。その人は幸せだ。気づいているだろうか。教えてあげたい。そんな幸せなことはないのだよ、と。もう……、もう二度と……、もう二度とあんな楽しい時間は訪れないだろう。もう二度と、あんな素晴らしい発想は生まれないだろう。僕からは、生まれないだろう。僕からは……。僕は……。今の僕は、王道から外れている。エキセントリックだ。」
p376
「でも……、僕は信じているのだ。喜嶋先生だけは、今でも相変わらず、学問の王道を歩かれているに違いない。きっと、先生だけは……。」