
kake
@kake_06
2026年8月20日
ファイア・ドーム(下)
辻村深月
読み終わった
上巻に続き下巻も読破。
上巻は小学校教師の美冬を中心に物語が進んだが、下巻は新聞記者の透真が中心となり、誘拐事件の解決だけでなく25年前の事件の真相が明らかにされていく構成だった。
上巻での噂の真偽を確かめずに責める世間に対し、当事者に会いに行き、その場の雰囲気や温度感を知った上で自分の言葉で発信する透真が対比であり、今の世の中に対する風刺のようにも見えた。
最後まで久我がその場しのぎの言動が多く遺族たちは報われないなと感じる瞬間もあったが、残された者たちが話し合い一緒に背負うと決めた姿や、光汰郎や速斗が日常に戻っていく姿には希望を感じられた。
最後に「ファイア・ドーム」というタイトルについて考えてみた。スノードームの雪がドーム内を覆うように、ある地域社会を悪意のない噂が覆う様子を例えているのだろう。スノードームがひっくり返す度に雪が舞うように、25年前は誘拐殺人事件を忠治が、晋也くん轢き逃げ事件を忠治や紗英が仕組んだと噂され、25年後には誘拐事件をやはり忠治を始めとした新沼家や担任である美冬が関係してると噂され、2度炎が舞うこととなった。しかし、物語の最後には、「眩い光がプリズムを作り、光の粒が雪のように自分たちに降り注ぐのをーその時、透真は確かに見た。」とあるように、噂という炎が希望という光に変わっている様子が描かれていた。
人の感情や世の中のリアルさの描き方や、内容的にもボリューム的にも重たいのに止まらずに読めてしまう、まさにこれらが辻村作品の特徴であると思っているし、やはり好きなのだなと実感した。