
torajiro
@torajiro
2026年8月16日
読み終わった
ポスト資本主義のあり方を贈与経済のアップデートによって模索する一冊。資本主義経済の歴史を概観する前半、そしてそのままではオルタナティブになり得ない従来の贈与経済の限界やデメリットを提示した上で、そのデメリットを乗り越えた新たな贈与経済のあり方を検討するという流れ。
苦学生に対して善意で無償の食事を提供する食堂のおじさん。無事に苦学生は卒業し一人前になったが、忙しい毎日の中で徐々に足が遠のき、恩の返し方も分からず、食堂のおじさんもモヤモヤする、という架空のストーリーが出てくるのですが、「東京の父」と称し接することで負債関係の清算を行おうとするが…、という辺りの話は従来の贈与経済だけではモヤモヤとしたしがらみのようになってしまうという点がわかりやすい。
ところ。
贈与経済1.0のデメリットを乗り越える理念的な議論としてはなるほどなと思いながら読み進めたのですが、その解決方法としてブロックチェーン上に贈与の実績を記録していくことや対価に類するものとしてのトークンの価値付けなどが出てくるところは感覚的な腹落ちにはまだまだ遠いのですが、本書が面白いのは単に議論をしているだけなのではなく、実際に実証実験を行っているところ。本書の時点で実証実験の結果や結論までが示されているわけではないので今後にも期待というところですね。
検討や議論が必要かなというところでは本書の議論は基本的に一対一の贈与だけが前提とされていたところでしょうか。議論をシンプルにするためかもしれないですが、実際には一対複数、例えばNPO等の非営利組織やその事業への贈与などがどのように扱われ、評価されるべきか、といった点も議論がなされ、実装にも反映が期待されるのでその辺りも注視しつつ今後の動きを待ちたい。
