
Satomi
@satomiww
2026年1月20日
骨灰
冲方丁
買った
読み終わった
モダンホラーは数々読んだけれど、本作は冒頭からかなり現実味があり、それが一入に読み手の恐怖を煽ってる気がする。大手に勤め、持ち家のマンションで妻子と暮らす順風満帆に見える主人公が、業務上での調査を引き金にして祟られ、転落していく様は(いろいろな意味で)恐ろしかった。この本を読んでしばらくの間、レンジやオーブンの異臭、壁のシミ、来客予定のないインターフォンが鳴ったとき、エレベーターホールから見える廊下に足跡がないか、頭の片隅で気になってしまう自分が影響され過ぎていて今思うと笑える。
本来の主人公は冷静で頭の回転も早く、怪異の類を信じていないからこそ、父親が語りかける言葉を想起しているのかと思いきやいつの間にか故人がそこにいるかのように振る舞い、それを何一つ違和感なく受け入れている状況に読み手すらも混乱させられた。死んだ人間と会話するなんて馬鹿馬鹿しい、と発言した直後に車内で父親の助言を従順に聞いていたり、「穴」へ十数人もの浮浪者を招いたことでさえ、本気で何がおかしいのか気付いていない(気付けない)様子がまさしく「侵食されていく」ようで背筋が凍ったのを覚えている。
祟りというのは、因縁によって広がる。善悪ではなく、自然の災害と同じ。災害に巻き込まれたからといって、その人の何が悪かったということは言えない。その不条理さこそが人間には到底理解できず、到達することができない神の領域なのだろう。
「知ってるか? おれたちみんな、死者の上で生活しているんだ。」