
RIYO BOOKS
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2023年10月28日

自省録(マルクス・アウレーリウス)
マルクス・アウレーリウス,
神谷美恵子
読み終わった
身体、霊魂、叡智、身体には感覚、霊魂には衝動、叡智には信念。感覚を通して印象を受けることは家畜どもにも見られる。衝動の糸にあやつられることは野獣や女のような男やパラリス(ファラリス)やネーロー(ネロ)でもやる。また義務と思われることに向って叡智を導き手となすことは、神々を否定する者や、祖国を見棄てる人間や、戸を閉めてから万事を行う連中でもやることだ。
さてもしすべて他のことは以上のものに共通だとすると、善い人間に特有なものとして残るのは、種々の出来事や、自分のために運命の手が織りなしてくれるものをことごとく愛し歓迎することである。また自分の胸の中に座を占めるダイモーンをけがしたり、多くの想念でこれを混乱させたりせずに、これを清澄にたもち、秩序正しく神にしたがい、一言たりとも真理にもとることを口にせず、正義に反する行動をとらぬことである。そして自分が誠実に、謙遜に、善意をもって生活をしているのをたとえ誰も信じてくれなくとも、誰にも腹を立てず、人生の終局目的に導く道を踏みはずしもしない。その目的に向って純潔に、平静に、何の執着もなく、強いられもせずに自ら自己の運命に適合して歩んで行かなくてはならないのである。
