Old Sport "海と毒薬" 2026年8月26日

海と毒薬
海と毒薬
遠藤周作,
駒井哲郎
①⓪⑧⭐︎⭐︎⭐︎★ 僕たち日本人には神様はいない。罰を嫌う意識はあっても、罪を嫌う意識はない。それを見事に描き切った作品である。 生体解剖という、倫理的にあってはならない非人道的な行為であるとわかっていながら、その行為に加担してしまう、あるいは断ることができない、日本人の弱さ。日本人に神様がいたのなら、明確に断ることができたのだろうか。良心が踏みとどませてくれたのだろうか。 また、本作は、当時の時代の社会構造ヒエラルキーを上手く描写している点も見事である。 春玲はこう述べる。「西部軍からアメリカ人捕虜に至るまでをカバーする複雑な身分階級のピラミッド型構造が『海と毒薬』の中で紡ぎ出されている。この構造の下層に位置する施療患者や女中、アメリカ人捕虜などは、同構造の上層部に身を構える人々にとって、いとも簡単に切り捨てられる存在である。いわば身分社会から取り残された「棄民」である。白い人と黄色い人という人種の問題だけではなく、日本人と「満人」、さらには日本人内部における地方人と東京人の差別化などは、当然そのまま戦争末期における日本社会の世相を照らし出していると思える。」 あらすじ(wiki) 引っ越した家の近くにある医院へ、持病を治療しに通う男。男はやがて、その医院の医師・勝呂(すぐろ)が、かつての解剖実験事件に参加していた人物であることを知る。 F市の大学病院の医師である勝呂。彼は、助かる見込みのない患者である「おばはん」が実験材料として使われようとすることに憤りを感じるが、教授たちに反対することが出来なかった。当時、橋本教授と権藤教授は医学部長を争っていたが、橋本は前部長の姪である田部夫人の手術に失敗し、死亡させてしまう。名誉挽回するために、B29の搭乗員の生体解剖を行い、勝呂と戸田も参加することになる。
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