
ちさ氏
@mochi_0625
2026年8月26日
舟を編む
三浦しをん
読み終わった
『舟を編む』読了。
昔アニメを1話だけ見た記憶があるけれど、当時はあまり刺さらなかった。今回原作を読んでみて、これは書籍だからこそ味わえる「文字」や「言葉」の良さがある作品なんだと思った。
「辞書とは、言葉という大海原を航海するための舟」という表現がとても好き。言葉という大海原。こんなふうに言葉を言葉で表現できることがすごいと思った。
「しま」と聞いていくつもの語義を思い浮かべる馬締と、「島」しか思い浮かばない西岡の場面も印象に残った。私は完全に西岡タイプ。普段何気なく使っている言葉にも、こんなにたくさんの意味や広がりがあるんだなと気づかされた。
馬締の成長物語なのだと思っていたけれど、読み終えてみると、大渡海という辞書を作ることを通した「人々の物語」だったのだと感じた。
西岡も好きだった。辞書作りへの情熱は馬締ほど強くないけれど、自分も必要とされていたのだとあがく姿が人間らしい。一番身近にいそうなタイプだと思う。
「なにかを生みだすためには、言葉がいる」という場面が特に心に残った。人の中にも、まだ形になっていないものがあって、そこに言葉が落ちることで、愛や心が形になっていく。言葉には、自分でもまだ分かっていないものを形にする力があるのだと思った。
松本先生が大渡海の完成を見ることなく亡くなってしまったのは悲しかった。でも、間に合わなかったからこそ、大渡海という一冊の中に、15年の月日と、そこに関わった人々の思いが残り続けるのだと思う。
人が亡くなっても、その人が残した言葉や思い出、誰かと過ごした時間は消えない。大渡海そのものが、松本先生たちが生きた証になったのだと思う。
言葉というものを、こんなにも綺麗に紡げるものなんだと感動した。
辞書は、ただ言葉の意味を記録した本ではない。そこには、人が言葉を探し、考え、誰かに伝えようとしてきた長い時間まで詰まっている。
『舟を編む』は、辞書を完成させる物語でありながら、言葉によって人の思いや時間が受け継がれていく物語だった。