
しまりす
@alice_soror
2025年4月3日

咒(まじない)の脳科学
中野信子
読んでる
自分で自分の発した言葉に驚かされることがある
→意味理解に使われる脳機能部位と、音声言語を発するための脳機能部位が異なっていて。おたがいに連絡をとるには遠い距離にあるため
発した言葉が無意識のレイヤーに影響する
真言、陀羅尼、アル=クルアーン「読誦されるもの」などは読まれる音を大事にし、美しい響きを持つ
認知科学的には美しい音の連なりやくり返しには、人間の思考を止める力がある
人間の一生は不完全情報ゲーム
戦略立案能力や論理的な最善手を迅速に探す能力よりも、「相手がどう考えるか」を読む心理戦
近年、脳科学ブームが続いているのは、脳科学がこうした技術の源泉になり得る科学的な根拠を与えるものだと一般に考えられているから
呪詛による突然死、Voodoo Death(ヴードゥー・デス)
「誰かからネガティブで攻撃的な感情を向けられているに違いない」という信念がアドレナリンの動態を変化させることによって心血管系が深刻なダメージを受け、それが死につながるという生理学者による考え方
プラシーボ効果、ノーシーボ効果
偽薬でODに至るケースも、医療の現場での言葉の選び方や伝え方にもある程度の配慮が必要
「競争に負けたオス」の負けグセが子に伝わる実験
虐待された側がする側になるという説
私たち人間の脳は苦痛よりも、快楽に弱くできている
正義中毒より根深い依存の実態
空気がルールの「コンプライアンス中毒」
依存症というのは本人の意志の力や心の弱さなどといった個人の資質に拠るものではなく、そもそも人間には快楽に抗える仕組みがないために、極めてベーシックな人間の(あるいは生物の)脳の機構を由来として起こるということを知っておく必要がある
サイコパスは反社会性パーソナリティに分類される
しかし、大衆の声が認知構造を支配せんとする時代となったいま、場合によっては、向社会性を維持しようとする大多数の人々のほうが、少数の反社会性パーソナリティの個体よりもずっと恐ろしいという現象が周期的に起こるようになった
「ウソをつく脳」が恋愛強者か恋愛弱者かの分かれ目
男性では恋愛経験の乏しい人ほど正直者
報酬が期待されるときに側坐核の活動がより高くなる人ほど、ウソをつく割合が高い
側坐核というのは、脳におけるいわゆる“快楽中枢”である
自分たちはそれと気づくことができないほど、私たちは自分たちのつくった虚構の中に搦めとられて生きており、この虚構を制する力を持つ者が世界を制すると言っても過言ではない
なぜ人は「わかりやすいもの」を見下すのか
現代アートはただ心地よく美しいだけでは価値を持たない、わかりにくく「難解」であることこそがその作品の質の高さを担保するのだという、ある種のスノビズムがこの中に内包されている
バーラインの理論、覚醒レベルを上昇させる刺激特性を「覚醒ポテンシャル」と呼び、複雑さや新奇さがその刺激に相当する
感性評価と覚醒レベルの関係は逆U字型の関数になると考えられる
つまり、理解しやすく、よく見知った刺激に対しては、単純であるとして物足りなさを感じ、時には批判するが、覚醒水準を最適にする刺激の値ーーどの程度の単純さと複雑さを持った刺激ならば最も快を高められるのかーーは、感情の種類、そして受け手によっても異なる
わかりやすさを理由に最初から敬遠して見ることすらしない人、というのは、この覚醒ポテンシャルのレベルが一定以上でないともう満足できなくなってしまった、閾値の上がりすぎた人
より難解で、複雑で、わかりにくいものに新奇性を感じるため、好もしく思う
現代アートの面白さは作品ないしは展示というひとつの「虚構」を通じて、現実を客体化して見る目を鑑賞者にもたらしてくれる点



