
torajiro
@torajiro
2026年8月26日
ゾンビ回収婦
小砂川チト
読み終わった
第175回芥川賞受賞作。
AIに仕事を奪われた夫婦。夫は演奏旅行と称して早々に退場し、妻は夫が残したヘッドセットを用いてVRの世界に没入しゾンビ回収婦としての生活に勤しむが、そこで何を感じ考え、現実の生活はどうなるのか…といったようなことがさまざまな比喩を感じさせる抽象度の高く入り組んだ表現で記述されていきます。
単にVRゲームの世界なのではなくゾンビを撃つFPS的なゲームの世界が舞台として選ばれておりゾンビが重要なモチーフであること、主人公が扮するのも惹かれるのもゲーム世界のプレイヤーではなくNPCであるということ、普通にゲーム世界を想像する限りではおよそ必要だとは思われないゾンビ回収という仕事が描かれることなど、物語を構成するさまざまな要素が現代社会のさまざまなメタファーであるように読めますが、何をどこまで意図して伝えようとしているのか明快に伝わってくるという類の作品ではありません。その辺りは好き嫌いのわかれるところかと思います。
個人的にはAIに仕事を奪われる前から現代社会に生きる我々は現実世界においてもとっくにゾンビ化しているのではと感じるのでそのようなメッセージを勝手に読み込んでしまいましたが、AIとともに生活することがかなり浸透してきている昨今、この作品が芥川賞を受賞し、どのように読まれるのかということの想像も含めて楽しかったです。
