
ヒヨリ
@charonll
2026年8月27日
斜め論
松本卓也
ちょっと開いた
◯「垂直方向の特権化を批判しつつ」、「現代的な水平方向の重視に完全に乗るわけでもなく」、「『斜め』を目指すこと」
私自身は精神病理学、精神分析等については知識がないので、第三章: 「生き延び」の誕生ーー上野千鶴子と信田さよ子 と第四章: 当事者研究の政治 だけとりあえず読んでみた。(ここだけでも十分に面白かった)
・上野にとって、大義のために死ぬことよりも、「今日のように明日も生きる」ことのほうがずっと重要であったのと同じように、死ぬしかないと思えてしまうような「煮詰まった」状態にある「苦痛」もまた、現実という地に足をつけた「苦労」に変えることができ、その「苦労」を生き延びていくことのなかにこそ回復があるのだ。
アルコール依存や統合失調症を「完全に治す」という大義に関して当事者と治療者がどれだけ無力を感じたとしても、それは決して絶望すべき事態ではない。むしろ、「一度限り決定的な」大義と結びついた「苦痛」から離れ、「そのたびごと」の「苦労」に目を向けることができるようになることこそ、回復なのである。
・垂直的なものによって奪われた主権は、水平的な関係を経由することによって回復することができるのだ。 そこで回復される主権は、仲間との水平的な関係によって支えられた垂直的なもの、いわば「斜め」の主権と言えないだろうか。
べてるの家において、このような「斜め」の主権のあり方は、「自分のことは自分"だけで"決めない」というスローガンによって明確化されている。これは、「自分のことは自分で決める」という当事者による自己決定とは区別される。というのも、後者の自己決定は、むしろ水平方向のやせ細りと、垂直方向への過剰な跳躍ーーすなわちビンスワンガーのいう「思い上がり」ーーと区別ができないからだ。べてるの家の「自分のことは自分"だけで"決めない」とは、人間学的均衡にもとづいたオルタナティブな主権のスローガンでもあるのだ。

