
DN/HP
@DN_HP
2026年8月28日

引き続き図書館で金子美恵子の自選短編集『砂の粒/孤独な場所で』から二編目の「曖昧な出発」を読む。
ある女性との別れ、それを招いた自らの行動。忘れたくとも忘れることの出来ない、夢にまでみる、というか夢との境も曖昧になるような、深い悔悟と後悔。そこには諦念があるようで、それ以上の煮え切らなさ往生際の悪さがあるような気がしてくる。ああ、「男」ってそういうところあるよね、というと主語がデカすぎるけれど、わたしにはそういうところがあるわけで……
表現も文章も構成まで美しい、幻想的とも思えるような小説から自分にもあるやだみが浮かび上がってくれば、記憶が蘇り、自責の念に駆られ、精神的に悶えてため息を吐くしかない。それでも、というかだからこそこの短編小説は素晴らしいとも思えるのだけど。
ところでこの短編の舞台って上野ですかね。あの街にはわたしにも悔悟と後悔とまだ煮え切っていない思い出があるのだった。ああ、ともういちどため息を吐く。
その小説の内容はまあ別にしても、帰りに寄った図書館で閉館迄の間に短い短編小説をひとつ読んで、それについて考えながら歩いて帰る、というのは、世界との間に設ける緩衝材のような時間なのだった。というようなことを考えながら、金井美恵子の短編を一編ずつ読んでいる日々です。
----
「明日になれば、あるいは明後日になれば、この執拗な夢から眼覚めることが出来るだろうか。ふたたび、彼女のことを忘れることが出来るだろうか。それを聞くことと見ることから逃れてきた、彼女の言葉と視線が、夢のなかに無限の薄明として広がりつづけることから、逃れることが出来るだろうか。為された行為ではなく、為されなかった行為こそが取りかえしようのない時間のなかで宙吊りにされ、聞くことを拒んだ言葉が、わたしに無限の言葉を繰り出すことを命令することから——。」(p38)





