
Yo
@otsuki
2026年8月28日
霧に貌
田村穂隆
読み終わった
鈴の音の絶えてしずかな冬の田に白磁が産んだ白磁のこども
窓ぎわに葡萄ジュースを吸いあげる肺のちからで夕暮れはくる
死の貌をくらくあかるくうつしだす月とは明器あるいは暗器
小神殿(エディキュール) ねむるあなたの口腔に永久歯あり書物のごとく
木の老いと人の老いとはちがうけど祖父の名にある〈幹〉のひと文字
こころは壺それも緋襷あなたからもらった言葉ごと砕けるよ
蜘蛛のようにあなたを好きで眼球にあぶら波打つ日の暮だった
目をとじて湯を浴びているいま画家がわたしを描くのならば羽をも
瞳孔は知りたさの沼その沼へ何羽の鳥を引き摺り込んで
十六時間睡眠 霧に貌がありとくに鼻翼があなたと似てた
眼の奥に脳がある あなたの眉がふたつの黒い鳥居にみえる