
鈍獣
@whale_in_da_room
2026年8月29日
京都の平熱ーー哲学者の都市案内
鷲田清一
読んでる
枕草子だ
“ たとえば、濡れた石畳。驟雨の後もいいが、打ち水した石畳はもっと心地よい。足もとに広がる墨絵の世界。その上を歩くと顎を生暖かい蒸気が撫でる。足裏に頑固な石の肌理を感じたとおもえば、次の瞬間、危うくつるりと足を滑らせそうになる。下駄のからから鳴る音に、ときどきひぃーっときしむ音が混じる。水を打った石畳、それは、見た目には静謐でも、そこを通りぬけると、身体のあちこちでいろいろな感覚がにぎやかにさざめきはじめるのだ。線香の香り、苔の感触、家の前に水を打つ音、格子越しに聞こえる包丁の音、簾越しに漏れくる三味線の音、舞妓を叱責する女将のきつい声、竿竹、豆腐、花の売り声。木戸をくぐるときの腰のしゃくれ。かつをだしの匂い。障子がつくる陰影。つるつるに磨いた柱の手触り……。”
