
ゆい
@no1sin
2026年8月29日
完全版 チェルノブイリの祈り
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ,
松本妙子
読み終わった
> この人たちはもういません。身分証明書だけがぼくたちの博物館にある。名前が……。しかし、もし彼らがこの仕事をやらなかったらどうですか。ぼくたちは、わが身を犠牲にする覚悟ができている.....。この点において、ぼくたちの右にでる者はだれもいない……。
じつは、ある男と議論したことがあって……。彼の言い分はこうでした。これは、わが国では命の価値がきわめて低いことと関係している。アジア的運命論だ。自分を犠牲にする人間は、自分が、もう二度とあらわれることのない唯一無二の比類なき個だということを感じていない。役割に焦がれている。かつて彼はせりふのない人間だった、端役だった。彼には筋書がなかった、背景だった。ところが、ここにきて彼は突如主役におどりでた。意義に焦がれている。わが国のプロパガンダとはいったいなにかね。わが国のイデオロギーとは。命を捧げよ、そのかわりに意義を得よ。たたえられる。役が与えられる!その死には大きな価値がある、死とひきかえの永遠だからね。彼はぼくを説得しようとした。いくつか例をあげて……。しかし、同意するもんか!ぜったいに!(P.226)