
路傍のクロワッサン
@bear-jew
2026年8月29日

読み終わった
謎の地下施設「方舟」に閉じ込められた9人の男女。
脱出するには誰かを犠牲にしなければならない。
死んでもいいのはー死ぬべきなのは誰か?
倫理観を揺さぶる戦々恐々のミステリー小説、それが本書です。
主人公たちが味わっている絶望感・閉塞感が伝わってくる描写力、人間の脆弱さを曝け出す展開づくりが上手で「次は何が起こるのか」とハラハラしっぱなし。
クライマックスで明かされる衝撃の事実には、読者も思わず床に突っ伏してしまうことでしょう。
どんでん返しとか抜きにしても、ソリッド・シチュエーションとフーダニットを掛け合わせたプロットがそもそも面白く、最初から最後まで楽しい一冊でした。
あまりキャラクター描写が深くないので感情移入し過ぎることはなく、ほどよい距離感から主人公たちの四苦八苦を眺めていられるので精神的負荷は少なめなのも良いところ。
内容自体は重めですが、わりと気軽に楽しめるエンタメ作品となっています。
もし映像化したらネタバレリスクは増大してしまうはず。
そうなってしまう前に一読しておく方がいいかもしれませんよ。
※以下から若干結末に触れます。
真相はぼかしますが、ご注意ください。
犯人を倒す真の方法が「自己犠牲」だったとは…。
全員が倫理ではなく、論理で動いたからこそ敗北してしまったわけですね。
そう考えると、本書における真のヒーローは探偵役を務めた〈翔太郎〉ではなく、家族のことを考え続けた〈矢崎幸太郎〉だったのかもしれません。




