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紅梅シュプレヒコール
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@bear-jew
今年(2026年)に入って本をよく読む様になりました。 読書家と名乗るにはまだまだですが、いろいろ読んでいきたいなと思ってます。 遅読なのは悪しからず。
  • 2026年9月30日
    月の影 影の海(下) 十二国記
    荒波に揉まれ、異国に適応していく〈陽子〉。 綺麗事では生きていけない状況のなか、「諦めたくない」という一心で前進し続ける彼女の姿は悲痛です。 さまざまな裏切りにあい、傷つき、冷酷になった彼女ですが、そんな彼女を引き戻すのも結局は「人との縁」。 怖がって全てを拒絶してしまえば、何も得られない。 「裏切られてもいいんだ」 自分の弱さを受け入れ、強くなることを決意した〈陽子〉。 そして遂に、ひとつの旅が終着を迎える怒涛の下巻です。
  • 2026年9月25日
    月の影 影の海(上) 十二国記
    ひとまず上巻を読了。 『魔性の子』から打って変わり、ファンタジー色が濃厚になってきました。 今作の主人公は〈中嶋陽子〉という女子高生。 人の顔をうかがってしまう八方美人な性格ゆえ、軸がない少女です。 そんな彼女が〈ケイキ〉と名乗る謎の男に連れられて、異国に漂流するところから物語は幕を開けます。 早々に〈ケイキ〉とはぐれてしまい、何もわからぬまま異国を彷徨うことになる〈陽子〉。 妖魔からの襲撃、人間からの裏切りといった度重なる試練に耐え忍ぶ彼女に、自然と同情心が湧き立ちます。 そして艱難辛苦を経て、着実に強靭になっていく心身。 それは生き延びるためには必要な変化である一方、「優しさ」をも削ぎ落としていく諸刃の剣。 果たして彼女はどのような運命を辿り、受け入れるのか。 期待して下巻を読みたいと思います。
  • 2026年9月21日
    魔性の子 十二国記
    新刊発売に湧き立つ世間の熱気に背中を押され、『十二国記』シリーズに手を出してみました。 なにやらファンの間では『魔性の子』から読むべきか、『月の影 影の海』から読むべきかでスタンスが分かれているようですが、私はいちおう順番通りに読んでみようかと思い本書から着手。 読み始めてまず、大人気ファンタジー小説と聞いていたのにホラー色が濃厚な物語で困惑。 と言っても、私が小野不由美氏の著作『残穢』や『屍鬼』(藤崎竜の漫画版ですが)は読んだことがあったので、問題なくスラスラ読み進めることができました。 自動的に報復を行う「ナニカ」に憑かれている男子学生〈高里〉、現世に居場所を感じられない教生〈広瀬〉が巻き込まれる阿鼻叫喚の惨劇は容赦がなく、目を背けたくなるほど。 映像化したらR指定は避けられないですね。 本書は『十二国記』への導入とのことですが、読了後も世界観は掴めず、これからどのように展開していくのか非常に気になっています。
  • 2026年9月19日
    自殺について 他四篇
    自殺について 他四篇
    光文社から出版されている古典新訳シリーズの『幸福について』『読書について』が面白かったので、こちらにも手を出してみましたが、なかなか分からんくて苦戦。 古典新訳シリーズの読みやすさを痛感しました。 わりと悲観主義者なショーペンハウアーですが、なんだかんだで人間を嫌いになりきれていない感じが個人的に好きです。 彼の哲学と実人生の間に矛盾があるためか、「先生」というよりは「近所の爺さん」くらいの感覚で接することができるのは彼のチャームポイントですね。 以下本書から気になった箇所を抜粋。 「死にゆくものは没落してゆく。けれども、萌芽は残るのであり、そこから新たな存在が現れ出、その新たなる存在は、今や、自分はどこからやって来たのか、何ゆえに自分は現にあるような存在なのかを知ることもなく、現に存在することになるのだ。」p28 「人間世界の全体を一望のもとに要約しようと試みるなら、至るところで目にとまるのは、休みのない闘いであり、脅威となって瞬間ごとに出くわすありとあらゆる種類の危険と災いに向き合って身体と精神のすべての力を傾けて生命と存在を維持しようとする精一杯の奮闘である。」p51 「意志は弦であり、意志を妨害あるいは抑止することは弦の振動であり、認識は共鳴盤であり、そして苦痛が音である。」p76 「人生において位置と方角を確かめるために頼りになる磁石を常時携えているためには、そして、人生をついぞ誤りなく、正しい光の下に眺めようとするならば、世界を一つの償いの場所と見なす習慣を身につけること以上に有益なことはない。つまり、いうなれば監獄、刑務所と見なすのだ。」p.85 「幸せな人生など不可能である。人間がせいぜい到達しうる最高の幸福は英雄的な人生行路だ。」p126
  • 2026年9月13日
    不幸になりたがる人たち 増補新版
    妥協してクマに喰われた主婦、床下に妻の遺体を埋めた夫、自ら身体を改造するマニア…。 精神科医である春日氏が収集した「珍奇なコレクション」をもとに、持論を展開していくグロテスクな一冊。 (サリン事件や神戸連続児童殺傷事件が発生した90年代を経て)サイコバブル期にあった2000年に出版された新書を文庫化して再版したものです。 共感できるものから常軌を逸したものまで幅広く揃えた「不幸になりたがる人たち」のコレクションは、どれもが珍妙怪奇。 表面からは理解できない事件・人格でも、実態を深掘りするとロジックが潜んでいるもの。 その「全くの荒唐無稽という訳ではない歪さ」が興味を掻き立て心を掴む一冊でした。 変な本ですが春日氏の諧謔のお陰でかなり読みやすいので、(学術的な本ではありませんが)精神医学に興味がある方には特にオススメです。
  • 2026年9月11日
    フォース・ウィングー第四騎竜団の戦姫ー 上
    (※上・下とも同じ感想を投稿してます。) ちょうど何かしらファンタジー系の作品を読みたいと思っていたところ、今作の存在を知り拝読。 区分的には(どちらかと言うと女性向けの)ヤングアダルト小説らしく、すっかりヤングとは言えない年齢になってしまった自分が楽しめるかしらと懸念を抱きながら読み進めていきました。 舞台はナヴァール王国という架空の国。 どうやら隣国との緊張関係が絶えないため、徴兵制を採用している王国とのこと。 この国には竜に乗り国を護る「竜騎手」なる役職があり、主人公〈ヴァイオレット〉は竜騎手を育てるための軍事学校に入学させられるところから物語は始まります。 とある理由から多くの人間に恨まれている彼女は、常に死と隣り合わせのの体育会系コミュニティで生き残れるのか…というのが大体のあらましです。 この説明だけだと普通のファンタジーな訳ですが、今作の特徴はここにロマンス要素を濃いめに組み込んでいるところにあります(ロマンス+ファンタジーで「ロマンタジー」と呼称)。 自分のことを憎んでいるであろう上級生のイケメン団長〈ゼイデン〉とのロミオとジュリエット的な恋愛模様が、人気の一端を担っているようです。 ロマンス系は映像になると心情の機微が分かりにくく、薄っぺらく感じてしまうことが多々あるので、こういう系の作品は小説で読む方が良さそうです。 文量は多いものの、サバイバル劇のスリリングと情熱的なロマンスが掛け合わさった物語は案外すらすらと読めてしまえるので、気になっているのなら物怖じせず手に取ってみて下さい。 目を見張る独創性、重厚なドラマ性はないものの、エンタメとしての面白味は十分な一作でした。 続刊が文庫化された際には、継続して読もうと思っています。 ちなみに、自分の推しキャラはリアムです。
  • 2026年9月11日
    フォース・ウィングー第四騎竜団の戦姫ー 下
    (※上・下とも同じ感想を投稿してます。) ちょうど何かしらファンタジー系の作品を読みたいと思っていたところ、今作の存在を知り拝読。 区分的には(どちらかと言うと女性向けの)ヤングアダルト小説らしく、すっかりヤングとは言えない年齢になってしまった自分が楽しめるかしらと懸念を抱きながら読み進めていきました。 舞台はナヴァール王国という架空の国。 どうやら隣国との緊張関係が絶えないため、徴兵制を採用している王国とのこと。 この国には竜に乗り国を護る「竜騎手」なる役職があり、主人公〈ヴァイオレット〉は竜騎手を育てるための軍事学校に入学させられるところから物語は始まります。 とある理由から多くの人間に恨まれている彼女は、常に死と隣り合わせのの体育会系コミュニティで生き残れるのか…というのが大体のあらましです。 この説明だけだと普通のファンタジーな訳ですが、今作の特徴はここにロマンス要素を濃いめに組み込んでいるところにあります(ロマンス+ファンタジーで「ロマンタジー」と呼称)。 自分のことを憎んでいるであろう上級生のイケメン団長〈ゼイデン〉とのロミオとジュリエット的な恋愛模様が、人気の一端を担っているようです。 ロマンス系は映像になると心情の機微が分かりにくく、薄っぺらく感じてしまうことが多々あるので、こういう系の作品は小説で読む方が良さそうです。 文量は多いものの、サバイバル劇のスリリングと情熱的なロマンスが掛け合わさった物語は案外すらすらと読めてしまえるので、気になっているのなら物怖じせず手に取ってみて下さい。 目を見張る独創性、重厚なドラマ性はないものの、エンタメとしての面白味は十分な一作でした。 続刊が文庫化された際には、継続して読もうと思っています。 ちなみに、自分の推しキャラはリアムです。
  • 2026年9月2日
    美しい夏
    美しい夏
    ファシズム期のイタリアを生き、齢41歳で夭逝した作家チェーザレ・パヴェーゼの代表作『美しい夏』。 光文社古典新訳文庫から発売されているのを発見し購入しました。 「あの頃はいつだって祝祭だった。」という一文から始まる主人公〈ルイーザ〉の追想。 16歳の時に彼女が出会ったモデルの〈アメーリア〉、そして画家の青年〈グイード〉らとの交流が躍動的に描かれていきます。 さて今作における一番の魅力は一体なにか。 それは、〈ルイーザ〉が経験する感情の揺れ動きを捉えた内面描写の妙ではないかと私は思います。 これほどまでに少女の存在をリアルに感じさせる描写を成しているのが、男性作家であることに驚きです。 「自尊心」と「大人への憧れ」を抱える少女が、ちょっとだけ大人になる中短編。 ページ数も少なくあっさり読めるおすすめの一冊です。
  • 2026年8月29日
    方舟
    方舟
    謎の地下施設「方舟」に閉じ込められた9人の男女。 脱出するには誰かを犠牲にしなければならない。 死んでもいいのはー死ぬべきなのは誰か? 倫理観を揺さぶる戦々恐々のミステリー小説、それが本書です。 主人公たちが味わっている絶望感・閉塞感が伝わってくる描写力、人間の脆弱さを曝け出す展開づくりが上手で「次は何が起こるのか」とハラハラしっぱなし。 クライマックスで明かされる衝撃の事実には、読者も思わず床に突っ伏してしまうことでしょう。 どんでん返しとか抜きにしても、ソリッド・シチュエーションとフーダニットを掛け合わせたプロットがそもそも面白く、最初から最後まで楽しい一冊でした。 あまりキャラクター描写が深くないので感情移入し過ぎることはなく、ほどよい距離感から主人公たちの四苦八苦を眺めていられるので精神的負荷は少なめなのも良いところ。 内容自体は重めですが、わりと気軽に楽しめるエンタメ作品となっています。 もし映像化したらネタバレリスクは増大してしまうはず。 そうなってしまう前に一読しておく方がいいかもしれませんよ。 ※以下から若干結末に触れます。 真相はぼかしますが、ご注意ください。 犯人を倒す真の方法が「自己犠牲」だったとは…。 全員が倫理ではなく、論理で動いたからこそ敗北してしまったわけですね。 そう考えると、本書における真のヒーローは探偵役を務めた〈翔太郎〉ではなく、家族のことを考え続けた〈矢崎幸太郎〉だったのかもしれません。
  • 2026年8月26日
    消えるヒッチハイカー アメリカの都市伝説とその意味 (キイ・ライブラリー)
    「これは実際にあった話なんだけど…」という入りから始まる都市伝説たち。 口承伝承によって共同創造されていくそれらの「伝説」たちは、語り手によってどう脚色され、拡大していったのか。 都市伝説を民俗学の視点から解体するアプローチを試みたヤン氏によってかき集められた数多の伝説を収録した興味深い一冊が、こちら『消えるヒッチハイカー』となっています。 本書は40年以上前に書かれた本ですが、読む価値はいまだ健在。 と言うのも、伝説が姿を変えることはあれど、結局のところ本質は変わらぬままであることが本書から分かるからです。 楽しいだけの伝説なら害は(それほど)ありませんが、世の中には結構タチの悪い伝説も氾濫しているもの。 SNSの普及で伝説の伝播力が格段に増大したことで、聞き手側に求められるリテラシーも比例して増大した現代。 もっともらしく語られるている物語を疑ってかかる姿勢は大事ですね。 最新の都市伝説を所望の方は、ハヤカワ新書より出版されている廣田龍平著『ネット怪談の民俗学』の併読をオススメします。
  • 2026年8月23日
    阿房列車
    阿房列車
    「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪に行ってこようと思う。」 天邪鬼爺さん百間先生が、国有鉄道の職員ヒマラヤ山系くんを随行させ繰り広げる無目的な紀行録をまとめた本書。 「酒を飲み過ぎてはいけない」と言っておきながら結局深酒してしまったり、「切符が取れなかったら諦めればいい」と言っていたのにいざ入手できないとなれば絶対に行くと意固地になるいい加減さが、とにかく面白い。 諧謔に満ちた独自の視点が満載で、つい笑ってしまうこと必定。 インターネットの膨張によって他者の目を過剰に意識してしまう現代だからこそ、百閒先生くらいのテキトーさが眩しいです。
  • 2026年8月17日
    ニューロマンサー〔新版〕
    ニューロマンサー〔新版〕
    サイバーパンクの嚆矢として名高い本書『ニューロマンサー』。 新版刊行時に購入していたものの、200ページ読んだところで挫折し、そのまま長らく積読状態になっていました。 そんな中、来年初頭配信予定の実写ドラマシリーズの予告編を視聴し興味が再燃。 重い腰をあげ読み進め、なんとか読了することができました。 まぁ、読み始めて最初にぶつかる鬼門は馴染みのない言葉の応酬でしょう。 外国文学を読むと毎度、何のこっちゃか想像しにくくて投げ出してしまいたくなるわけですが、なんと新版は優しいことに巻末に用語解説を掲載! 旧版から約1000円ほど値上げされたのは苦しいですが、これは実に嬉しい配慮です。 ただ、この用語解説があっても読みやすい小説では決してありません。 読み手の想像力を試してくる作品です(SF小説は概してそうなんですが)。 しかもページ数が500を超えてるときてる‥。 多くの人はこの時点で二の足を踏んでしまうと思います。 しかし、本書からしか得られない栄養があるのは確かです。 バイオレンスで混沌とした世界に没入《ジャック・イン》する体験は、他では体験できないもの。 いちど読んでみて挫折するのも良し。 いつかはきっと、キブスン・ワールドの魅力に気づけるはず。 とりあえずは、"なんか分からんけど格好いい"を楽しみましょう。
  • 2026年8月15日
    悪と嘘を描く
    『北斗の拳』の原作担当で広く知られる武論尊(別ペンネームには史村翔)が、半生を振り返りながら私論を展開していく一冊。 帯には「初めて明かされる原作術」などと書かれていますが、実際の中身はちょっと違います。 本書は"こうすれば上手く物語を組み立てられる"といった指南書ではなく、あくまで武論尊氏が自身の経験から得た私論を明かすもの。 なので、答えを探して本書を開くのではなく、何かしらのヒントを発見できれば儲けもんくらいの気持ちで読むのが良いかと思われます(著者自身、冒頭にてその旨を表明しています)。 ただ、売り文句と中身にギャップはあっても、本書は純粋に読み物として面白いです。 本宮ひろ志との出会い、編集者との試行錯誤、作画担当との関わり方‥。 武論尊氏だからこそ書ける文章がてんこ盛りで、読む手が止まりません。 自分のことを歯車でしかないと割り切ってしまう姿勢もクリエイター関連の書籍にしては珍しく、そこもまた新鮮な気持ちで楽しむことができました。 AIなどを利用し効率的に成果を上げることが要求される現代。 武論尊氏の『優れた作品を生み出すためには、そこに効率化を求めてはならない。(本文より引用)』という考えは意識していきたいと思います。
  • 2026年8月13日
    なぜあなたの感想はふつうなのか
    映画について語るのをたまに聞く程度には存じあげている大島さんが本を出版。 評判も良さそうですし、テーマにも興味があったので拝読してみました。 率直な感想としては、悪くはないけど1500円ほどの価値があったかというと微妙なところ。 最近の「言語化」の潮流に対する警鐘は至極ごもっともですし、第2章から語られる思考法のアドバイスも参考にはしやすいので、人によってはタメになりそうです(第3章後半は正直蛇足)。 ただ自分は本書から青天の霹靂のような知見は得られず、物足りなさの方が強く残ってしまいました。 私的には、大島さんのもっとパーソナルな部分を垣間見てみたかったですね(例えば、ある一週間のスケジュールのようなもの)。
  • 2026年8月6日
    鹿男あをによし
    『鴨川ホルモー』に続いて、万城目氏のもう一つの代表作『鹿男あをによし』を読了。 京都を舞台に繰り広げられていた『ホルモー』から変わり、今作の舞台は奈良。 それゆえ、「古墳」「卑弥呼」、そして「鹿」といった奈良の象徴たちが続々と物語に登場。 奈良の歴史と地理を上手く絡み合わせ、荒唐無稽な万城目ワールドを構築しています。 知識に裏付けされたデタラメこそ、万城目文学の真髄ですね。 また、各登場人物のキャラクターが等身大に仕立て上げられているため、現実との乖離を感じず、私たちが知らないだけで実際にどこかで繰り広げられているのかもしれないという錯覚を抱かせてくれるのも面白いところです。 100ページに至るまで本筋には入らなくても苦痛なく読めてしまえるのは、、キャラクターが上手く描けているからなんでしょう。 そして何と言っても、(『鴨川ホルモー』もですが)『鹿男あをによし』という題名の口触りのよさが良い。 いちど聞いたら忘れないですし、つい口に出して言ってみたくなりますよね。
  • 2026年8月2日
    修辞的思考
    修辞的思考
    序文に、「修辞的思考の発現した様々な技巧の中で、論理の力によるのではない「非=論理的」な説得力の出どころを突き止め、それに論理的説明を与えることが本書の目的である。」と書かれている通り、本書は修辞的思考を論理的に解剖しようと試みた一冊となっています。 名著に仕込まれたレトリックを、著者なりのアプローチで読み解いていく解説はどれも面白く、「なるほど」と首肯しながら読み進めることができました。 ちなみに、取り上げられている作品はシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』、ラ・ロシュフコーの『マクシム』、ドストエフスキーの『罪と罰』、中島敦の『山月記』、伊藤整の『青春について』の計5本です。 レトリックとは何かを学べるだけでなく、本の読み方・楽しみ方を提示してくれる本書には一読の価値があります。 レトリックは詭弁だと白眼視されがちですが、知っておくと見方と思考の幅が広がるので(本書に限らず)何かしら読んでみると良いかもしれませんよ。 そのなかでも本書は、入門としてオススメできる一冊なので興味があれば一読してみてください。
  • 2026年7月31日
    777 トリプルセブン
    伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ第4弾にあたる本書。 正直言うと伊坂作品に特別興味があるわけではないのですが、今シリーズだけは大好きで全作読んでいます。 前作『AX』が個人的に微妙だったので、本書のハードカバー版はスルーしていたのですが、文庫化されたのを機にいっちょ拝読。 率直な感想は、シンプルに面白い! ホテルというソリッドなロケーションで繰り広げられる殺し屋たち(本編では「業者」と呼称)の攻防戦は読んでいて楽しいです。 「天道虫」こと不運な殺し屋〈七尾〉が再登場し、『マリアビートル』的な面白さに回帰しているのも好みでした。 もしかしたら『グラスホッパー』→『マリアビートル』→『AX』→『777』と作品ごとで緩急をつけているのかもしれません。 キャラクターの魅力で世界観を支えつつ、「裏切り」を仕込んだプロットで驚かせてくれる本シリーズは、伊坂幸太郎の真髄を痛感できる見事なエンタメです。 いずれは、NetflixかWOWWOWあたりでドラマ化して欲しいものです。 ただ、敵の戦闘スタイルが吹き矢なのはダサかったなぁ…。
  • 2026年7月30日
    反ミーム部門は存在しない (ハヤカワ文庫SF)
    タイトルにある「反ミーム」とは一体なんなのか。 なんとなくネットを漂流していれば「ミーム」という単語には出会う機会があると思いますが、その実際的な意味については知らなかったりします。 かくいう私も詳しく知らなかったのですが、どうやらミームというのは「自己複製し拡散する情報」を意味するとのこと。 つまりその反対の「反ミーム」とは、「情報を拡散しない」ことを意味しています。 本書ではそんな「反ミーム」特性(記憶や記録を消去する)を持つ存在と人類との戦いが、スリリングに展開していきます。 何が起きているのか、何が起ころうとしているのか、人智を超えたストーリーにただただ圧倒されるばかり。 SF、オカルト、ホラー、あらゆるジャンルが混じり合うカオスさとは裏腹に、精緻に練られたプロットが魅力的な一作です。
  • 2026年7月28日
    ホラー映画超近現代史
    スラッシャー映画が若者を熱狂させた7,80年代。 しかし90年代に入るとホラー映画は力を失い、代わりに『羊たちの沈黙』『セブン』のようなサイコ・スリラーが市場を賑わせ始めます。 ホラー映画はこのまま衰退していくのか、そう思われた時にあの名作『ソウ』が登場。 いやいや『ソウ』もサイコ・スリラーでしょ、と言う方もいるでしょうが、『ソウ』はまごうことなきホラーの文脈から生まれた作品なのです! というような話が満載の本書。 見識のある方々をゲストに招いての対談は、どれもタメになるものばかり。 ホラー初心者のみならずホラー愛好家もじゅうぶん満足できるはずです。 私自身はホラー映画レベル"中"くらいなので、かなり読み応えありました。 とくにスプラット・パック(イーライ・ロスやロブ・ゾンビ)、ニューウェーブ・オブ・フレンチホラー(アレクサンドル・アジャやパスカル・ロジェ)、マンブルゴア(タイ・ウェストやアダム・ウィンガード)といった括りは詳しく知らなかったので、読んで良かったです。 もちろん作家のことだけではなく、ブラムハウス、A24、NEONといったゼロ年代以降のホラーを支えるスタジオにも言及。 膨大な文字数と広範囲の情報に思わずくらっとする様な一冊です。
  • 2026年7月20日
    成瀬は信じた道をいく
    文庫化された成瀬シリーズ第二弾、『成瀬は信じた道をいく(通称:成信)』を読了。 前作に引けを取らないユニークな続編で大変満足です。 収録されている5つの物語はどれも面白く、あっという間に読み終わってしまいました。 市井の人々に対して炸裂する成瀬節でクスッと笑え、彼女の威風堂々とした姿勢からは元気をもらうことができる今シリーズは、やはり読んでいて楽しいです。 第三弾かつ完結作の次作は、すでにソフトカバーで出版されているので読めるのですが、まだお別れするのは寂しいので文庫化を待ちたいと思います。
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