
くん
@kun
2026年8月30日
宝石のこえ
野沢きみ
読み終わった
女性の声を聴くと宝石を吐き出す宇宙人に朗読するアルバイトをする代わりに、奨学金を得ながら生活する主人公。
家族に対する嫌悪、大切な人に対する深い愛、汚い言葉を発する浅慮な人々への殺意、そんな複雑な主人公の独白のような、日記のような、不思議な物語だった。
過去と現在がくるくると入れ替わり、今どこにいるのか、足元がおぼつかない不思議な感覚を味わう文体だった。
他者から向けられた優しさに感謝しながらも、自分からは何も返せない。
生まれ育った地から逃げ出したくて、何ものにも執着せず、自分自身すら大切にせず、いつかこの世界から消えてしまいそうな危うさを感じながら、それでもどこかで少しでも幸せになって欲しいと思いながら読み進めた。
主人公の大切な人たちの名前はするすると序盤から明示されるのに、最後まで明かされなかった主人公の名前。
主人公がこれから辿る旅は、果たしてどこに辿り着くのか。
寂しくもあり、けれど少しでも幸せな瞬間が訪れると良いのだけれどと祈ってしまった。
