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@kun
福岡在住の本好きです。読書会にもちょこちょこ参加。ミステリー、SF、純文、エッセイ、なんでも読みます。
  • 2026年8月19日
    赤い靴の誘惑 (株)魔法製作所 (創元推理文庫)
    魔法製作所第2弾。 最悪な以前の職場から脱出し、新しい職場に少しずつ馴染み始めた矢先、会社で発生するスパイ疑惑。 プライベートではテキサスに住む両親が感謝祭休暇でやって来る事になり、さらにケイティ自身にも危機が迫る急展開のストーリーだった。 様々な事件やトラブルが発生し、ケイティの平穏でおかしな日々はどうなるのか心配だったけど、ページを捲る手が止まらず、今回も楽しく読んでしまった。 ケイティの勇敢さや現実との泥臭い向き合い方、不器用な恋愛の姿がとてもキュートで応援したくなってしまった。 まだまだシリーズは読み始めたばかり。 これからのケイティの成長が楽しみだ。
  • 2026年8月2日
    鬼葛島の殺人
    鬼葛島の殺人
    脱出ゲーム+謎解き+殺人ミステリー第二弾。 今回の舞台は京都の無人島。 宝探しツアーを楽しむはずが、参加者の1人が死体で発見され、宝探しツアーは一転する。 今回も詩文の明晰な頭脳、理人の映像記憶能力で謎の解決が進んでいく。 そして二人の精神的な成長と関係性の深まりが感じられた。 宝探しツアーで用意された謎解き、滞在先となる建物の図面、文章中に隠されたヒント…。 たくさん仕込まれた仕掛けを見つけ出し、絶対謎を解くぞ!と決意強く読んでいたけど、やっぱり難しかった。
  • 2026年7月25日
    本屋さんのある街で
    本屋さんのある街で
    本屋さんをテーマにした豪華執筆陣によるアンソロジー。 本屋さんが好きなので楽しみにしていた作品。 本屋さんをテーマにしつつ、本屋さんを利用する人だったり、本屋さんで働くする人だったり、本屋さんを始める人だったり、本屋さんを受け継ぐ人だったり、舞台も関係性も様々。 どの作品も本屋さんへの愛が描かれていて、どの作品も短編ながらおもしろかったけど、一穂ミチさんの「歌うように生きて」が衝撃的で切なかった。 この始まりからこの結末に着地するのかと驚かされた。 でもどの作品も読み終えた時はスッキリとした気持ちになって、家の近くの本屋に行きたくなる。 本屋さんの現実的な危機とかも描かれてはいるけれど、それ以上に描かれている本屋への深い愛が、じわじわと伝わり、物語の余韻と共に味わえる。
  • 2026年7月20日
    ブルーローズは眠らない
    不可能と言われた青いバラを同時期に作出したテニエル博士とクリーブランド牧師。 両者と面談した直後、密室状態の温室で切断された首が見つかり、事件の捜査が始まるが、解けない密室の謎、怪しい容疑者、そして起こる第二の事件が謎をさらに複雑にしていく。 2人の青いバラを巡る長く哀しい事件だった。 ジェリーフィッシュと同じく被害者の独白と断片的に挿入される事件や証言や視点。 複雑な構成と絡み合う時間と証言と事件から、途中でなんとなく真相が見えて来たけど、犯人でない事を祈っていたけど、さらに切ない結末だった。 先が気になってページを捲る手を止められなかった。 最後まで読むと、タイトルに込められた意味と仕掛けも分かる。 マリアと漣シリーズの第二弾も仕掛けがふんだんで安定して面白かった! 続けて第三弾の「グラスバードは還らない」を読みたいところだけど、買ったばかりのミステリーを読んでしまいたい…。
  • 2026年7月19日
    エミリー・ワイルドの妖精事典
    エミリー・ワイルドの妖精事典
    出版社のXでの紹介を見て読みたくなって手に取った。 主人公のエミリーはケンブリッジ大学の教授で、樹木妖精学研究者。 フィールドワークで各地の伝承や妖精を調査する、ごくごく平凡な見た目の女性。 少し人付き合いが苦手で、話すことも苦手。 そんな性質が災いし、北極圏に近いリョースランド島での妖精フィールドワークは村人たちの協力を得られず前途多難。 後からひょっこり現れて、図々しくエミリーの研究に合流した同僚のライバル、バンブルビーはその美貌と人当たりの良さと軽やかな口であっという間に村人に溶け込み、図らずもエミリーの研究が進めやすくなる。 相容れない2人の対立と協力体制を軸に、リョースランド島フラヴンズヴィク村の人たちとの交流と、妖精フィールドワークの物語が、エミリーの日記として綴られていく。 全く正反対のエミリーとバンブルビーなのに、同僚やライバルという関係を超えた関係性。 物語はエミリーの日記と時々挿入される注釈で書かれていて、最初注釈で引用される学術文献や本、伝承が本当にあるのかと信じ込んでしまった。 研究者の日記という形態のせいか、客観的に世界や自分を分析し、淡々と綴られていて読みやすかった。 物語の世界線では、妖精は一般に認知され、希少生物として研究対象にされている。 読んでいると、自分が認識している妖精よりもグロテスクで、「隣人」呼ばれるように身近な存在なのだと理解した。 物語は予想を超える展開で、でもファンタジーというよりも現実的だった。 結末までたどり着いた時、さらにエミリーの物語が読みたくなった。 全三部作との事なので、これからの翻訳が楽しみだ。
  • 2026年6月14日
    目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
    職場で借りた本。 社内でこの本を読んだ5人でドキュメンタリーの視聴会も開催した。 本を読んでなんとなくイメージしていた白鳥さんは、映像の中でもそのままで、でも予想より速く歩く人だった。 本の中で、作者の有緒さん、マイティ、白鳥さんはいつも楽しそうに美術鑑賞をしている。 時々行ったことのある美術館や、見た事のある作品も出てくるので、自分が感じたものと異なる意見や見方を知ることができるのもまた楽しかった。 本には、作品の写真も掲載されているので、一緒に作品を見ている気分になる瞬間もあったけれど、ドキュメンタリー映画もまた、現場の空気感が少し感じられるものだった。 目が見えること、見えないこと、身体的特徴関係なく、ただ一緒にいて楽しい、話していて楽しい、それだけで良いのだと感じた。 美術館、次は何を見に行こうかな。 白鳥さんたちみたいに仲の良い友人と、会話を楽しみながら行きたい。
  • 2026年6月4日
    伝説とカフェラテ
    伝説とカフェラテ
    ニューヨークの魔法使いの帯で紹介されていたので図書館で借りて読んでみた。 夢だった珈琲店を開くため、傭兵生活から足を洗い、テューネの街にやって来たオークのヴィヴ。 土地を買い、建物を改装し、人を雇い、ようやくオープンしたけれど最初は閑古鳥が鳴く状態。 ヴィヴの周囲に集まって来た人たちに助けられて、少しずつ繁盛し始める姿を描いている。 剣や魔法に頼らず、アイデアと出会った人との縁、交渉などでピンチを乗り越え、チャンスに変えていく、ヴィヴの夢の珈琲店を作り上げていく過程が興味深くもあり、温かく見守る気持ちだった。 途中心折れるような悲しい事件も起きるけれど、ヴィヴの周囲に集まった人たちの力で、乗り越えていく場面もまた魅力的だった。 本屋をたてなおすという前日譚の本も読んでみたい。
  • 2026年5月24日
    ニューヨークの魔法使い
    ニューヨークの魔法使い
    シャンナ・スウェンドソンの魔法治療師のティーショップの続きの出版を待つ間に、同じ作者の別のシリーズ、(株)魔法製作所シリーズを読んでみた。 テキサスからニューヨークに出てきて一年のケイティ(キャスリーン・チャンドラー)にとって、ニューヨークはおかしな街だった。 背中に妖精の羽をつけた女性、地面から2インチ浮かんで歩いている人、手首をくいとひねって電車を呼び出す男性、時々現れるガーゴイル…。 日々変なものを見ても驚いたりショックを受けるのはケイティだけで、まわりの人たちは眉ひとつ動かさない。 自分がおかしくなったのか、街がおかしいのか、混乱する中、ヒステリックな上司のミミにも振り回されて、ケイティは仕事もプライベートもボロボロな状態。 そんなタイミングでケイティに訪れる思わぬ転職のタイミング。 平凡普通なケイティと、おかしな街ニューヨーク、そして少しの魔法の物語。 日常を少し踏み外すと存在する魔法と冒険の日々にワクワクする、大人のためのファンタジーだった。 テキサスという田舎出身のケイティから見ると都会のニューヨークですら魔法に満ちた不思議な街なのに、さらにおかしな魔法まで。巻き込まれたケイティの目線と次々明かされる真実への取り組み方がケイティの平凡さが素敵だった。 恋愛には少し臆病で、でも一緒に普段着のまま大好きな人とソファーで寄り添い、テイクアウトを食べながらテレビで古い映画を見る、そんな恋人が欲しいと願うケイティの恋の行方も気になる。 シリーズなので次の作品も楽しみ。
  • 2026年5月17日
    魔法治療師のティーショップ パン職人の秘密
    魔法治療師のティーショップ パン職人の秘密
    魔法治療師のティーショップ第2弾は、パン職人のルシーナをメインとしたストーリー。 エルウィン(ウィン)とブリンのその後も描かれていて、シリーズものとしても楽しめるけど、単独の作品としても楽しめた。 大半の住民が突然消えてしまった不思議なリディング村は、何かから逃げている人、居場所を求めている人たちを呼び寄せる不思議な力がある。 村に元々住む人も、何かに追われて住み着いた人たちも、誰にも言えない秘密や傷を抱えている。 前作ではウィンとブリンの秘密が暴かれたけれど、今作ではパン職人ルシーナの心の傷が描かれている。 すごい魔法が出てくる訳ではないけれど、のどかな田舎の村で巻き起こる事件のスパイス程度のちょっと不思議な魔法が混ざり合い、今作も楽しかった。 村の秘密は次作で明かされるのかな? 楽しみ。
    魔法治療師のティーショップ パン職人の秘密
  • 2026年5月11日
    魔法治療師のティーショップ
    魔法治療師のティーショップ
    帯に書かれた「ハーブティー」「コージーファンタジィ」という単語に興味を惹かれて読んでみた。 魔法とハーブで病気や怪我を治療する魔法治療師を主人公に、魔法と剣のあるファンタジーな世界観だけど、魔法に頼り切らない、恋や自分自身を信じて再び立ち上がる人の姿や、偽らない本質での人々との交流を描いた、地に足のついた物語だった。 ハリーポッターのような生活に寄り添っているような魔法の距離感が好きな方におすすめ。家に棲みつく目には見えない家政婦、私も欲しい。
  • 2026年3月11日
    そいつはほんとに敵なのか
    不思議なタイトルとかわいいぬいぐるみの表紙、「SNSを捨て、喧嘩を始めよう」と書かれた物騒な帯、出版社の紹介文に〈喧嘩入門エッセイ〉。 見かけるたびに気にかかり、家の近くの書店にて購入し読み始めた。 「喧嘩がしたい」と言いつつ実際に喧嘩をする訳ではなく、具体的な敵がいるということでもない。 できれば喧嘩を避けて無難にやり過ごしたいと言いつつ、色々な敵に対する苛立ちを感じ、けれどそれは「自分のことをもっと知りたい」、「濃密なコミュニケーションをとりたい」という欲求の言い換えだと冒頭の「はじめに」ネタバレしている。 「はじめに」で書かれているネタバレの通り、この本は著者が敵とみなした相手に対して感じたこと、それらを文章に書くうちに自分自身を見つめ直し、自分自身をもっと知りたいという考えにいたり、最後に敵とか戦うという発想をやめて旅に出たいと思うエッセイだった。 読んでいるうちに、自分自身も偏った視点や考えになっていないか、振り返ってしまった。 人を信じること、自分自身を信じること、違いではなく共通点や同じ考えが一つでもあるのであればそこを喜ぼう。そうすることでより良い楽しい生活になると思う。
  • 2026年1月3日
    魔女の館の殺人 (ハーパーBOOKS+)
    リアル脱出ゲーム×ミステリーという斬新な組み合わせが気になり読んでみた。 リアル脱出ゲームを共通の趣味としている大学生コンビの2人。 専攻も性格も違い、少しデコボコしているけれど、側から見ているとお互いの苦手な部分を補い合っているように見える。 そんな2人がたまたま参加することになったリアル脱出ゲーム。 実際に出てくるパズルや図版が読んでいる読者にも体験しているような気分にさせる。 少しホラー要素も含みつつ、楽しい謎解きは一変して殺人事件となり、そこから犯人に翻弄されながらも推理が進んでいく。 ミスリードなどにひっかかって犯人が分からなかったけど、動機は早い段階で読み解けた。 トリックは解けば簡単なものだけど、リアル脱出ゲーム好きにはたまらないミステリーだと思う。 主人公2人の推理、シリーズものとしても読んでみたい。
  • 2025年12月7日
    成瀬は信じた道をいく
    成瀬シリーズ第二弾は高校生から大学生へと成長していく成瀬と成瀬のまわりの人たちとのお話。 成瀬は相変わらずだけど、大学生になるのかーと感慨深かった。 今回も連作短編で、登場人物はリングするけれど、五話それぞれ独立した話になっていて読みやすく、そしてどの作品も面白かった。 五話通して成瀬と島崎の関係の変化が一番メインで描かれていたけど、成瀬のお父さんが可愛らしい性格だった。 心配性だけどおっとり優しいお父さんと、泰然とした娘の対比がおもしろかった。 次はいよいよ最終巻。 楽しみにしていたけれど、名残惜しい。
    成瀬は信じた道をいく
  • 2025年11月9日
    謎の香りはパン屋から
    第23回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作ということ、パン屋さんが舞台というのでパン好きなら読まねば!と思っていたら文喫にあったので読み始めたら読み終わってしまった。 5種類のパンをテーマに5つの章に分かれたお話と謎だったので、テンポよくするすると読み進められた。 読んでるとパンが食べたくなる。 そして、最後に明かされる2つの真相。 伏線に気付かず…で、ちょっと悔しい。 ヒントは散りばめられていたのに。 美味しくて、あったかい気持ちになるお話ばかりで、最後のカレーパンのお話は少しグッときてしまった。 本を閉じて、パンを早速買って帰りたい。
  • 2025年10月20日
    ヤクザときどきピアノ 増補版
    「ずっとピアノが弾きたかった。」 そんなまえがきの一文からスタートした、ヤクザライターの鈴木智彦さんが52歳にして通い始めたピアノ初心者によるピアノ教室レッスンのドキュメンタリー。 ヤクザライターというだけに、独特の言い回しが多く、本を開いて30分後、笑いが止まらず本を閉じた。 外で読むのが危険すぎて、自宅にて一気読みした。 遅筆である鈴木さんが5年も取材に費やした「サカナとヤクザ」が校了し、ライターズ・ハイの状態でABBAの「ダンシング・クイーン」を聞いて涙を流し、猛烈に感情を揺さぶられ、 「ピアノでこの曲を弾きたい」 という思いからスタートしたピアノ教室探しでも、ヤクザライターの変なクセが出たり、随所で笑ってしまった。 そんな中で出会った『レイコ先生』がとても素敵な方だった。 「練習すれば、弾けない曲などありません」 というレイコ先生の一太刀で、鈴木さんの「ダンシング・クイーン」を弾くための日々が始まる。 レイコ先生が伝える音楽の楽しさ、弾きたいという気持ちを大切にしたレッスンは、読んでいて清々しかった。 どこまでも表現がヤクザ寄りで、歴代の音楽家を極道の系譜で語って説明されて、ますます理解できずに笑ったり、随所に世間とのズレを見せるところが、この本の魅力かもしれない。 自分の持てる語彙を懸命に使い、ピアノの楽しさ、音楽の素晴らしさ、大人になって音楽を始めるという体験を語ろうとするその姿が随所に散りばめられ、読んでいるだけで音楽の素晴らしさ、楽しさ、そして鈴木さんの音楽に向き合う真摯な姿が伝わってきた。 最終目標である発表会の結末は…ぜひ読んでみて欲しい。 発表会は2019年12月に開催され、YouTubeにも上がっている。 文庫は増補版ということで、発表会後、コロナ禍を経て鈴木さんはピアノを続けているのか、そこまでも追加されている。
  • 2025年10月15日
    派遣者たち
    派遣者たち
    住処を奪われた人類と氾濫体との戦いを巡るディストピアかと思い読み始めると、冒頭から三分の一くらいまでは地下都市ラブバワでのテリンの日々を淡々と描いていたのに、中盤から突然、個について、意識や自我の存在について問いかけ始める。 「自我とは?」 「個体とは?」 「死とは?」 「われわれとは?」 「わたしたちとは?」 「きみが本当にひとつの存在なのか」 人間と外側との境界線が崩れることで、人間と非人間との共生の難しさ、変化と困難がテーマとして浮き彫りになってくる。 本来の自分を全く失うことなく、異質な他者との共存は難しい。自身の存在や生存を脅かす危険性がある他者を、主人公のテリンは苦悩の果てに信じ、受け入れ、変化する。 テリンとイゼフが望む2人共通の夢と未来は、そこに憎しみも加えられて到達した結末はとても美しかった。 コロナを経たからこそ描くことができた、他者との共生と個の存在について描いた作品でした。 また何年かしたら再読してその時の自分がどう感じるのかを味わってみたい。
  • 2025年10月5日
    立ち読みの歴史
    三宅香帆さんがPage Turnersで紹介していて気になって図書館で借りてみたら面白かった! メモを取りたいところが多すぎて、メモばかりとっていたらなかなか読み進められずやっと読み終わった。 立ち読みの歴史を語る時、リテラシーとしての識字率が前提になる。 読み書きができなければそもそも本を読めない。 都市部で読み書きできる人が増えて来て、ようやく立ち読みの歴史を紐解く調査がスタート。 立ち読みするためには開架式になったタイミング(江戸時代は閉架式で座売りだった)、開架式になるには平置きからタテ置きするために和本(和装本)から洋本(洋装本)となり、さらに背表紙がつかなければならい…など、江戸から明治、大正にかけてどのタイミングで立ち読みがスタートするのか、近代読書史・書籍流通史、出版社や書店の社史まで使って紐解くところがすごかった。 江戸時代の本の種類や、そもそも雑誌は本屋で売られていなかったという歴史など、現代には残っておらず、本の流通の大きな変化は知らないことばかりだった。 大火や震災、戦争によって消えてしまった様々な歴史や事実を作者が様々な文献や資料、図版から掘り起こしていくのに大変苦労していたところも本文中に正直に書かれていた。 調査の過程は国立国会図書館で15年にわたるレファレンス業務の経験が活かされていた。 巻末の図版出典や、もっと読書史を読みたい読者への推薦図書リストなどを見るとよく分かる。 読書史の推薦図書もかなり読んでみたい本ばかりでした。 丹念な調査から掘り起こした立ち読みの歴史、そして立ち読みがどう変化していこうとしているのか、ぜひ読んでみてほしい。
  • 2025年9月30日
    GOAT meets(01)
    GOAT meets(01)
    「GOAT」の姉妹誌として7月に誕生した「GOAT meets」。 読者が作家たちと出会い、また作家自身が新たなテーマと出会う場、というコンセプトの文芸誌。 小説、エッセイ、ノンフィクション、詩、短歌、イラスト、写真、現代アートと幅広く取り扱われていて、文芸誌の本としての分厚さよりも中身の濃さに圧倒されて少しずつ読んだ。 国境、言語、性別、障害、戦争、時、世界、病…。 様々な違いや分断を越えて、行きたい場所へ行く、会いたい人に会いに行く、やりたいことを達成する。 表紙裏に書かれた、 「ともに新たな世界と出会いにいきましょう。新たな人を見にいきましょう。」 その自戒の念もこもったメッセージをテーマに創作されたたくさんの作品はどれも新鮮で衝撃的だった。 韓国の作家や作品、韓国と日本の関係性と未来についての作品も多く、韓国作家の作品が気になり始めているタイミングだったので読むことでかなり読みたい作品が増えてしまった。 GOATは読書バリアフリーにも取り組んでいて、紙の本と同時に電子書籍を同時配信し、さらに視覚障害・肢体不自由などの理由で必要としてる方へテキストデータの提供も行なっていたり、日本点字図書館の協力でテキストDAISY版の提供も行なっている。 テキストデータの提供、DAISY版への提供の難しさについては、滝口悠生さんの「テキストデータについて試行と提案」に詳しく書かれていた。印刷に関わっている身としては印刷後の国立国会図書館以外への提供については知らないことばかりだったので勉強になった。 出版社や著者への提言は、制度や仕組みをすぎに変えられない現実問題と、今読みたい必要としている読者に向けて、今すぐに取り組めることとして良いなと思った。 ポッドキャストと連動した対談「そろそろ本屋大賞についてマジメに語ろうか」は誌面で読む前にポッドキャストで聞いていたので楽しみながらしっかり読むことができた。 本屋大賞も創設されて20年を越え、創設当初の目的や、芥川賞・直木賞との関係性は気になっていたところで面白い対談だった。 今後、オーディオブック化も進めていくとのことなので、耳でも目でも楽しめる作りは、これからの読書バリアフリーへの推進へと繋がっていくのかな。その道のりを期待したい。
  • 2025年9月22日
    ジェリーフィッシュは凍らない
    パラレルワールドの1980年代を舞台に、現実とは異なる発展を遂げた科学技術で誕生した小型飛行船「ジェリーフィッシュ」を惨劇の現場としたクローズド・サークル。犯人の独白、当時のジェリーフィッシュ内の物語、捜査する警察側の視点、3つの視点から描かれた、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」への挑戦作。 最初の殺人が起こった後のジェリーフィッシュ内の会話から、何となく犯人は分かったけれど、果たして全員死んだのか、それとも犯人だけ生き残ったのか分からず、さらにトリックも分からなかった。 中盤でなんとなくトリックが明示され、エピローグ直前で犯人は確定するけれど、犯人の動機が分からなかった。 エピローグで明かされた真実と動機。 犯人が最後にどうなったのか。 気になる終わり方だった。 読み終えて、もう一度最初から読み返し、作者に騙されていた事が悔しかった。 続編の「ブルーローズは眠らない」も早く読んでみたい。
    ジェリーフィッシュは凍らない
  • 2025年9月20日
    なんて素敵にジャパネスク ―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(1) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫)
    小学生以来かも?というくらい久しぶりに読んだ「なんて素敵にジャパネスク」。 氷室冴子さんの作品がオレンジ文庫で復刊始まって懐かしくなり、初めて読んだ氷室冴子作品というのとで、図書館で借りた。 新装版だけど発行年は1999年。 コバルト文庫なので中高生向けのライトノベルで、舞台は平安時代。 だけどそこは現代的に一部置き換えて、話し言葉も現代なので昔読んだ時も読みやすかった。 当時としてはあり得ない設定だけど、お転婆で行動的な瑠璃姫と、幼なじみ高彬をメインとした恋愛と結婚と陰謀のお話。 結婚しようとするタイミングで事件が起き、なかなか結婚できない二人の、ドタバタストーリー。 元気な瑠璃姫に久々に再会して、懐かしかった。 新装版あとがきで氷室さん自身も、 「シリーズ物を書いていると、主人公がいつも同じ失敗をしているのはバカみたいに思えてくるし、人間としても成長して欲しい『欲』みたいなものが出てしてしまいます。」 と語っていて、大人になってしまって続きを書かなくなってしまった…という事が書かれていて、少しずつコバルト文庫から卒業していった気持ちにも似ていた。 十数年ぶりにゲラを読み直し、原稿を書いていたときの感覚を思い出し、 「再会できて、ほんとうに嬉しい。物語というのはありがたい、会おうとすれば、いつでも再会できるから、と当たり前のことにも気づきました。」 そんな思いを語っていて、昔読んだ本を読み返すのも良いなーと改めて感じた。 新装版のあとがき、読めて良かった。 コバルト文庫から2018年に復刻版が出ているけれど、図書館にあったので借りてみたけれど、かなり年季が入っているし、水濡れで傷んでいるため本を開くたびにハウスダストアレルギーの身としてはツラかった…。
    なんて素敵にジャパネスク ―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(1) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫)
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