
読書猫
@YYG_3
2025年4月4日

詩の構造についての覚え書
入沢康夫
読み終わった
(本文抜粋)
“「詩は表現ではない」ということを、今一度言い直せば「詩作品は、伝達の手段ではない」ということだが、ここでいささか補足をしておくと、《マッチ棒を耳かきとして使い、とがったつららを凶器として用いる》といった意味でなら(つまり部分の機能を意識的に誤用──あるいは活用すれば)伝達手段であり得る場合もあろうと言っておくべきかもしれぬ。けれども、一つ一つの詩作品そのものの本来の任務は、やはり伝達という点にはないと言わねばならない。
では、一歩を進めて、「詩作品は手段ではない」と言えるだろうか。さらにそれを裏返して、「手段ではなく、それ自体が目的なのだ」と言えないか。あるいはこう言いかえることも考えられる。「手段でなくて、言葉で作られてそれ自体で完結した一つの世界、一つの事物、つまりオブジェである」と。”