花春 "すみれ屋敷の罪人" 2026年8月30日

花春
花春
@haru-tuge
2026年8月30日
すみれ屋敷の罪人
『少女マクベス』が面白かったので別作品も読んでみたいな〜と思い、タイトルと表紙がきれいだったコレ! 面白かった! 確かにジャンルとしてはミステリーなのだけど、スポットが当たっているのは戦時下という時代に翻弄されるキャラクターそのものだなと思った。 途中からこういうことだったんだろうな〜は透けるのだけど、真実に至るまでとその後の人間心理を丁寧に描いているので、最後まで面白く読める。 「往年のすみれ屋敷の話を、まだ存命の関係者ひとりひとりから聞く」形式なので、それぞれの立場からそれぞれのキャラクター、時代が描かれる。それぞれが抱えた秘密から目を逸らして、自分に都合よく記憶を曲げている。 「絢爛たるすみれ屋敷の思い出のベールが剥がれて、かつての真実が明かされる」形式だし、確かにそこに罪はあったのだけれど、それでも読後感は切なく清々しい。 謎が明かされてゆく過程で、キャラクターたちによい変化が訪れるのだよな。少女マクベスもそうだったので、この「つらいけれども、謎が明かされてよかったなあ」と思えるように展開するのは、作者のこだわりなのかもしれない? 戦時下という異常事態で、それぞれの心が少しずつこころの歯車が狂っていったり、最初から狂っていたり。茜さんの最後に巻き込まれる桜さんちょっと可哀想すぎるけれども。 三姉妹と使用人たちで、絆の描き方が対照的なのが、かなしくも美しい。 市川さん…市川さんもなあ…彼の主張もまたすみれ屋敷の人々を想ってのことだったのがせつないな…。 桜さんが姉を疎んでアカだと嘘の密告をするシーンがぞっとしたな…。桜さん、平和であればそんな過激な加害行為をするような人ではないだろうというのはそれまでの描写でわかるから、「戦争はそこまで人を変えるのだ」というわかりやすい例示だった。 葵さんがあれは己への悪意ではないと信じてるあたりも、そうだね、そりが合わずとも大事な妹だものね、そう信じたいよね…とじんわりつらい…。 全員必要なキャラクターだったのだけれども、人数多いし人間関係も多様だったので、誰が誰か曖昧なまま読み進めてることが多かったのが残念かなあ。屋敷の見取り図とキャラクターの一覧図ほしかったかも。 誠の命が救われるところもなー…そこだけファンタジーすぎる気がするので、もう少しぼかすというか、「まあ現実的には違うだろうけど誠はヒナかもしれないと夢をみる」くらいのラインに落とし込んでほしかった。 面白かった! 次はどの作品を読もうかなあ…!
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