
ユメ
@yume_bookworm
2026年8月11日
新装版 デルフィニア戦記
茅田砂胡
読み終わった
感想
前巻の終わり方にはかなり動揺したが、今作ではとうとう第I部がクライマックスを迎え、ウォルの出生の真実が明かされる。ウォルなら間違いなく民のための政治をしてくれる王になると信じていたから、女官長カリンが告白を終えたときには思わず天を仰いだ。
真実をただひとり知る者であったカリンにとっても、ペールゼンが口を滑らせるかどうかは一世一代の賭けだったことだろう。戦場には立たずとも、城の中でウォルのために戦い続けていた彼女に天晴れと拍手を送りたい。
そして、絶体絶命の窮地に駆けつけて国王軍を救った意外な人物の格好よさよ。タウの自由民との繋がりは、第II部以降のストーリー展開の伏線ともなっていきそうな予感がする。
戦いの末に王座を奪還したウォルに対し、リィが掛けた戴冠の言葉には、二人がここまで築いてきた信頼を感じられたし、戦友として自分の傍らに留まってほしかったウォルがリィを王女にするという力技は痛快だった。リィの「そんな法律、ばかばかしくて誰も書かなかったんだ!!」という台詞には大笑い。
リィの台詞といえば、奇襲で捕えたバルロの身柄を「おみやげ」と称してナシアスに引き渡したのも傑作だった。バルロとナシアス、改革派によって長く立場を分かたれていた二人だが、その固い友情が揺らがなかったのもいい。
第I部の全4冊、いちどたりとも面白さが途切れることなく、読んでいると時間が過ぎるのがあっというまだった。新装版を刊行してくれた中公文庫に心から感謝したい。



