
きくへい
@KikuchiKohei
2026年8月27日

読み終わった
読みながらずっと違和感を抱えていた。読み終わっても、なかなかそれがなんなのか分からなかった。
この本は、アメリカの白人労働者階級が置かれた窮状と、運良くそこから抜け出して立身出世を果たしたJ.D.ヴァンスの回想録だ。
貧困、失業、薬物依存、家庭崩壊、教育格差。ヴァンスは、自分の家族や故郷の人々が抱えてきた問題をかなり具体的に描いている。
書かれていることは事実なのだろうし、その事実を知っているヴァンスが問題意識を持つのも分かる。
でも、いま違和感の正体が分かった。この本の根底には、「我々は白人なのに、なぜこんなに厳しい環境に追いやられているのか」という意識があるのだ。
もちろん、ヴァンスは「白人だから問題なのだ」とは言わない。むしろ、そのように読まれないように、ところどころでエクスキューズを入れている。
それでも、本文中で「白人」という言葉が74箇所も登場する。
これは単純に白人であることを強調しているという話ではない。
むしろ、「白人であることが特権である」というアメリカ社会の一般的な語りと、「自分たちもまた困窮している」というヴァンスの実感との間にあるズレが、この本の背景にあるように感じる。
黒人や移民など、歴史的に差別されてきた人々の困難については、社会構造や差別の問題として語られる。一方で、白人の労働者階級が経済的・社会的に没落していくとき、それをどう説明するのか。
ヴァンスが描いているのは、まさにその問題なのではないか。
だから、この本は単なる「貧困からの脱出」の話ではない。
「自分たちはアメリカ社会の中心にいるはずだったのに、いつの間にか取り残されている」という感覚の記録でもある。
そして、その感覚が、トランプ現象を理解するうえでも重要なのだと思う。


