
ドッグストエフスキー
@dogstoevsky
2026年8月31日

地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)
コルソン・ホワイトヘッド
読み終わった
面白かった!エンターテイメントとしても楽しめる。目を覆いたくなるような黒人奴隷たちの苦難や死が所狭しと語られているけれど、「地下鉄道」を文字通り受け取って、フィクションの中で再編されたアメリカ地下全土を走り回る鉄道、変わった登場人物(奇妙なことにこの作品で最も魅力的なのは奴隷狩りのリッジウェイとその忠実な従者である黒人少年ホーマーだ。彼らの漫画チックな出たちは作者のアメコミ趣味から来てそう)、駅に着くたびに変わる土地柄の描写は冒険小説そのものだ。スティーブン・スピルバーグがこの小説を映画化すると勘違いしてたのだけれど、そう思い違うのも致し方ないレベルのストーリーテリングだった。
ただ、作中の黒人奴隷たちへの仕打ちは本当に残虐で心が滅入ります。たいていの黒人も、たいていの協力者も死んでしまう。人類って碌でもないけど、奴隷制度を無くしたのは立派だと思う。やはり良い方向へ進む意思というのは大切なのだと思う。ジョジョ5部じゃないけど。
私が好きなのはエセルの章。頑迷で臆病、あまり知恵の回らない白人女性なんだけれど、その心を紐解く章が面白い。彼女の人生はなんら楽しいことひとつなく、その中で輝いていたのがアフリカ奥地に住む「黒ん坊」たちに救済をもたらすという妄想で、この妄想の細い糸が、主人公コーラを通して、人生で一瞬だけ結ばれる。こういう奇矯な人間の話を読めるのが小説の嬉しいところ。
本作では女性が主人公で、多くの女性が強姦されるけれど、月経の描写はない。そこらへんは男性作家っぽいかも。




