地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)

3件の記録
- DN/HP@DN_HP2025年9月16日archive野田努『完全版 ブラック・マシン・ミュージック』のデトロイトのアンダーグラウンド・レイルロードの件を読んだら、この小説も読み返したくなった。 「コーラは奴隷たちの物語を、生まれつき鎖に繋がれていたが文字を覚えたひとびとの手記を読んだ。またアフリカから拉致され、故郷や家族と引き裂かれたひとびとの拘束の悲惨さ、そして逃亡の恐怖を描いた物語を読んだ。自分の物語だとコーラは感じた。コーラの知るすべての黒人の物語、そしてこれから生まれてくる物語。彼らがいつか勝利するための足掛かりとなるものだ。」 コルソン・ホワイトヘッドは未だ勝利したとはいえない時代に、精緻な調査と想像力を使って、足掛かりとなるその物語を書いた。「列車が走るあいだ外を見ておくがいい。アメリカの真の顔がわかるだろう」物語にたびたび太字で登場する台詞。コーラがいくつかの土地で体験、知ることになる真の顔とはつまり、建設と文明化のなの下で行われた侵略と征服であり、破壊と隷属、そして撲滅へ向かう白人の顔なのかもしれない。黒人作家が繰り返しそれを書くのは「白人がやろうとしないからだ。だからわたしたちは、自分でやらなくてはならない」からなのだと感じる。わたしたちはこれを「自分の物語」として読むことは出来ないけれど、それを知ることはとても重要であり、自分の社会に省みることも、「やらなくてはならない」。
- 冥王星の祈り@playlute_pu2025年4月20日読み終わったとにかくしんどいの。 丸善で冒険本特集していて手に取った。冒険…かぁ… 地下鉄はフィクション。でもそれ以外の部分は創作だろうけど、現実にあったであろうことは想像に難くない。 昔に父親に勧められて奇妙な果実を読んでいたし多少は知っていると思っていても足りなかった。 奇妙な果実のくだりもあった。 「この通りは現在自由の道と呼ばれている。死体は街まで続いている。」 でも奇妙な果実がリリースされたのはコーラが生きたこの時代の100年後。100年経っても大して変わっていないのだ。 「全ての人間は生まれつき平等だー人間ではないと判断されない限り」 「ひとが自分に相応なだけの不運を受け取るものならば、これだけの困難を呼び込む自分はいったい何をしたのだろうか?」 15歳の女の子にここまで思わせる、それでも周りの仲間たちは自由を可能性を夢に描いて信じている。 とある配信では最後はホッとする的なことを言っていて頭を抱えてしまった。そう思って終わらせないと…というのもわかる気はする。 最後の方、演説では「この国は存在するべきではなかった。この国の土台は殺人、強奪、残虐さでできているから。それでもなお、われらはここにいる。」とも語られていた。アメリカに限った話ではないと思う。 凄くしんどい。凄くしんどいけど、誰かにも読んで欲しいと思う作品だった。