阿久津隆 "余命一週間の探偵として" 2026年8月18日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2026年8月18日
余命一週間の探偵として
余命一週間の探偵として
ホリー・ジャクソン,
服部京子
風呂場は窓があるわけではないから明るい時間も何もないが、今日はこうしようというのがあって、明るい時間に風呂に入って、風呂で長々と読書をするという過ごし方をしようというものだった。 水と炭酸を持って入り、手と本を置く用のタオルも持って入り、蓋の上に置いて、最初は風呂の縁のところに腰掛けて足湯状態で読み始めて、ジェットという人が主人公で、ハロウィンの夜の最初の章でたくさんの人たちが出てきて、そうか、ここで犯人の可能性のある人たちが全員案内されるということか、と思いながら読んで、湯船に浸かり、本にカバーを巻いてもらったのは、たとえ風呂の蓋の上でも、風呂の扉を全開にしていても、いくらかは湿気にやられるだろう、そのときに第一の層として書店のカバーが守ってくれるところがあるだろう、というところでだったが、カバーはたしかに徐々に湿気を帯びていって、風呂読書はいいな、と思い、これを高尾山温泉でできたら最高なんだがな、と思い、そういう読書OKイベントみたいなものを高尾山温泉なりと、手を組んで、やるみたいなことはできないか、できたらすごく気持ちよさそう、と思い、温泉でサイレント・リーディング・レイヴだ、楽しそう、と思い、ジェットは、そうなるであろうタイミングで襲撃され、それから目を覚まして、しかし余命一週間とのこと。成功確率10%の手術をするか、一週間生きるか。 p.67 どうしたいかって? もちろん、人生を取りもどしたい。まだ頭をかち割られていない二日前まで遡って、こんなことがけっして起きないよう用心したい。追い求めていたことを追いつづけたい。なにか大きなことを、まぎれもなく偉業と言えるなにかをやりとげ、自分だってやればできるんだということを証明したい。そこでようやく人生をはじめられるはずだったのに。長いあいだ持久戦をつづけてきて、いまになって時間が尽きようとしている。 ああ、参ったな、時間がない人の話なんだ、そんなの、タイトルからわかりそうなものですが、何も考えていなかった。余命というのは、嫌なものだ、見たくないものだ、失敗したな、読み続けられるかな、それにしたって、きつい、染みるセリフだな、やめて〜、という気分だな、と思いながら、風呂から上がった。
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