
ケイ
@flyingkei
2026年9月3日
二月のつぎに七月が
堀江敏幸
読み始めた
発売日に買ったものの忙しく、少し読み始めたところで半年以上放置してしまっていたので、改めて最初から読み直し。
1〜69ページ
物語ではあるけれど、かぎ括弧を使わず句点で会話をつなぐスタイルが、すべての情景を懐かしい思い出のような、アルバムをめくりながら回顧する遠い日のことのような手触りにしている。登場人物たちも、怒りや挫折感、やるせなさといった人間的な感情の起伏はもちろんあるものの、事実上の独白であっても第三人称で語られるそれらの感情は、ガラス一枚隔てて眺めるようなふわりとした距離感があって、生々しく迫ってはこない。けれど、傷は傷としてそこにあり、乾いたかさぶたのような傷をそれぞれに抱えた人たちが、他人同士の優しい距離感を保って、物語の舞台である市場隣接の食堂に集っている。
堀江氏の端正でほんのり温かくどこまでも知的な文章が編み出す物語世界に、日常生活でざわついた心が凪いでいく。