土田(つちだ) "夜の海をゆく人よ" 2026年9月3日

夜の海をゆく人よ
佐原ひかりさんの新刊。 通り魔から妊婦をかばって刺殺された元婚約者の死を飲み込めないでいる女性と、同じく彼の死を引きずる彼の弟。取り残された2人の傷や悲しみは、似ているようで違うことが段々とわかってきて……というお話。 善いことをしたい、やさしくなりたい、でもそれって誰にとって? ---------- (以下、本文より引用) 「おれが、見あやまりたくないんだ。善いことと、悪いことを」 「みんな、逃げすぎなんだよ。〝そういう価値観もある〟とか〝正義は人それぞれ〟とか、それっぽい言葉を並べとけば、何が善で何が悪か本気で考えなくてすむ。そうやって、悪がのさばるのを許してる。そういうやつに、おれはなりたくない」 「自己犠牲を選択しないのは、責められるべきことじゃない。それだけは、おぼえておいて。土壇場で〝善い行い〟をまっとうできなくても、あんたは悪くない。あんたは人間で、神さまじゃない。恐怖も躊躇もする、ただのちっぽけな人間でしかないの。私を──誰かを助けられなくても、身をほろぼすほど、悔やまないで」
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