
ユメ
@yume_bookworm
2026年9月2日

夜明けのはざま (ポプラ文庫)
町田そのこ
読み終わった
心に残る一節
感想
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「今、何がいちばん怖いですか?」——もしそんなことを訊かれたら、私は迷わず「死」だと答える。
厳密に言うならば、「大切な家族と死に別れること」が怖いのだ。家族に先立たれることを心底恐れているし、自分が家族を置いてゆくことを想像するのも辛い。
そんな私にとって、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」を舞台にした連作短編集である『夜明けのはざま』という物語は、深く胸に響いた。
作中、ひとの命がローソクに喩えられる章がある。ローソクの炎が消えてしまうタイミングも、ローソクそのものの長さも、火が尽きてしまうその瞬間が来るまで誰にも分からない。
だからこそ、月並みな表現にはなってしまうが、日々をできるだけ後悔のないよう過ごすしかないのだと思う。
同じ章に、「ぼくたちはあまりにも、明日に任せすぎている」という印象深い台詞が出てくる。この言葉が本当に心に刺さった。
また、胸の奥に故人の居場所を作っておくことが、「心に椅子を置くこと」に喩えられているのにも感銘を受けた。
今日できることを明日に延ばさず、今この瞬間をよりよく生きる。
そうすることで、もし大切なひとを喪ったとしても、心の中に置いたそのひとのための椅子に、いつか本人がそっと座りに来てくれるような人間であれるかもしれない。あるいは、もし自分が愛するひとを遺して旅立ったとしても、そのひとが私のための椅子を心の中に置いておいてくれるような人間であれるかもしれない。
いつか別れが訪れることは誰にも避けられないけれど、人間は故人との記憶を受け継いでゆくことができる生き物だ。遺される側、遺してゆく側、どちらになったとしても、繋がれてゆく記憶が少しでも美しいものとなるよう、今をよりよく生きようと努めたい。
そんな大切なことを教えてくれる物語だった。今読むことができて、本当によかった。
※ ポプラ社さんのキャンペーンで『夜明けのはざま』SNS応援メンバーに当選し、献本いただきました。

