のーとみ "献灯使 (講談社文庫)" 2025年4月6日

のーとみ
@notomi
2025年4月6日
献灯使 (講談社文庫)
多和田葉子の作品はだいたいそうだけど、短編集とは思わずに読み終えてから、あれ?世間では別々の作品を集めた短編集扱いなのかーとなりがち。この作品も、全部合わせて、日本が世界地図から消滅した経緯についての物語だと思って読んで、これなら消滅するわー、と納得してしまった。で、「地球にちりばめられて」に繋がって行く。それだとスサノオが何故あんな風なのかも分かりやすいし、既に希望が書かれていることが分かってるから、「献灯使」はディストピア小説ではなく、大きな話のプロローグというか、滅ぶべくして滅んでしまって、自らを閉じた極東の島国のある瞬間の物語として読めてしまう。 その意味では、最後の話が演劇として終わるのはちょっと物足りないとも言える。アレはあれで、普通に動物たちの物語として終わった方がスッキリしたとは思う。まあ、スッキリさせないことが重要だったんだという気もする、震災後という時代。にしても、このテーマ、この半分ホラーとも言えそうなストーリーを、こんなにも面白く、遊び心にも溢れた文章で書けてしまう才能の巨大さよ。そのうち本格ミステリ書いて欲しいなあ。
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