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@blue-red
2025年4月6日

庭の話
宇野常寛
再読した
近ごろ、社会についての問題提起や議論の記事を読むと、やたらと「コミュニティ」の建て直しや作り直しの必要性を述べて締めるみたいなものが本当に多いと感じる。「うーん、コミュニティねぇ…」と率直にそれ良いものだと思えなかったモヤモヤを、著者は明瞭に言語化してみせる。そして、オルタナティブとなる観念と指針を提示する。
実地訪問、文芸批評、インタビュー、先行研究紹介、古典読解、個人的エピソードと総力戦のような本で、思索と連想を誘う興味深い人文知がつまっている。展開される議論は常に問題意識に結びついており、文量は多い本だけど散漫な印象を与えなかった。
社会を論じた本だが、別に起業家や活動家ではない普通の人たちにとっても個人的な行動指針を取り出せる。「庭」を自分なりに言い換えると、昔からよく言われる人間関係に依存しない趣味を持っておくと精神的に安定できるというやつだ。個人的にもそういう趣味(庭的なるもの)を大事にしており、本書によりそれはまちがっていなかったんだなと勇気付けられた。
